お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

メトロノーム、52歳

今日は本当に暑いから水分とって、出来るだけ家の中にいなさいよ

そうここ数日、毎朝玄関で出勤して行く夫に言われる。

梅雨の湿度と低気圧にもぐったりしたが、明けた途端の連日の猛暑は、それはそれで体力を奪っていく。

ここ数日、毎朝起きると、原因不明の目眩がする。寝ている間に何があったのかわからないが、脱水か、軽い熱中症状態なのかもしれない。

ああよく寝たっとスッキリスタートするのが理想だが、1日の始まりの時点で既にぐったりしているのだ。

そうでなくとも低血圧で緩慢なところ、よりよろっよろっと動く。

別に怒っているわけでもないのに、私は追い詰められた体調になってくると、口数が減る傾向がある。

ふと頭に思い浮かんだことがあると、ポンと口をついて出て、そこに向こうが反応した言葉にまた返し、些細なやり取りの数分で、よしよし今日も夫婦だ夫婦だと確認したりするのがいつもの朝。

それがどんよりモードになると、少ないエネルギーを無駄に消耗するまいとするのかひたすら黙々と味噌汁を作り茶碗を並べ、低い声で

「出来たよ・・・」

と朝食を出すから偉い違いだ。

夫のかなりのマイペースには振り回されて困ることもあるが、こういうとき、本当にいい方に作用するから救われる。

あれこれ手伝いや家庭サービスに気の回るような人ならば、きっとこんな妻の不調もすぐに反応し見逃してはくれないだろう。

具合が悪くなるたび大丈夫?具合悪いの?手伝おうか?と言われたら次第に申し訳なくて自己嫌悪になる。

なんだよ、いっつもすぐ調子わるくなって、朝っぱらから辛気臭いんだよっ。

と苛立たれたら悲しくなって泣くだろう。

出来たよ。

あ、はーい、ありがとう。

私の声のトーンにも口数にもまったくお構いなく、彼はいつも、同じ。新聞を閉じて嬉しそうに食卓につく。

いただきまーす、ありがとね。

まるでリズムが乱れやすい私のそばでタン、タン、タン、タンと打つメトロノームみたいだ。

今日は夫の52歳の誕生日。

26で結婚したから彼の人生のやっと半分、一緒に歩いたことになる。

これからの一年一年が新しい一歩になるようで、私までスタートラインに立ったような気にもなる。

おめでとう。

いよいよ、こっからですね。タン、タン、タンとこれからもよろしくお願いします。