お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

30個がいいよ、だけ

昨夜、息子が「オヤジ、こっちきてずっとパソコンとスマホいじってるだけじゃねぇか」と怒った。「かあちゃん、ほったらかしにしやがって。今日も一日中、そのカッコかよ」連日、パンツとシャツでいる夫に腹がたったらしい。

今朝、起きると、夫がすでに短パンにTシャツを着てベッドに寝ていた。

「散歩行くんでしょ。僕も行く」

「いいよ、来ないで」

「行く、一緒に行く。今日で最後だから」

「来なくていい」

「行く」

「断る」

玄関で待っているので、仕方なく、一緒に出た。

例によって何も話さず。ひたすら歩く。二人のきゅっきゅっという足音と、蝉の声。私はふと思いついて、いつもの公園コースをやめて、氏神様のいる神社に向かう。

並んで、それぞれの財布からお賽銭を投げ、手を合わせる。心の中で住所番地、夫の名前、その妻です。いつもありがとうございます。夫は何やらやけに長く拝んでいた。そこからまた黙々と夫は私の行く道をついてくる。途中、コンビニで朝食のパンとコーヒーを買い、ブレンドコーヒーをイートインで飲む。外の見える長テーブルに並んで座って、ゆっくりゆっくりすするように飲む。

頭にカフェインが回っていくのがじんわりわかる。細胞が覚めはじめる。ジンジンした足もほどけていく。私の心もゆるんでくる。

あぁ。だから嫌だったんだ。せっかく一人に慣れてきたのに。二人でほっこりしたら、もう明日帰るんじゃん。

飲み干して、しばらく座り続け、やがて、私が立つ。「行くか」夫も立つ。

また二人並んで黙って歩いて帰ると息子がちょうど起きてきた。

「散歩、いったんか。よしよし」

2時間歩いて会話したのは会社の人へのお土産を20個入りにするというのを30個にしたほうがいいということだけだった。それで充分なのだ。不思議なもんだ、夫婦とは。