お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

いじめてやった

昨日の夕方、携帯が鳴る。画面を見ると夫だった。

「もしもし、あ、僕ですけど」

「どうしたの」

「あの、今晩、飲んで帰る事になっちゃった。」

あ、やっぱり。

「お誕生祝いですか?」

「だから、悪いなと思って電話した」

「ダイジョブよ。気をつけて」

「ごめんね」

だいじょぶだいじょぶ。じゃ、そういうことなので、ごめんね。と短いやりとりで切れた。

誕生日が一杯やるための出汁に使われたのだとしても、一緒に飲もうと誘ってくれる人がいるというのがありがたい。

よしよし、お友達がいるんだね。

その晩は息子と二人普通の食事をして、普通にさっさと寝た。

飲んでくる日はどうせ遅いんだろうと、さっさと寝る。

するといつも翌朝目が覚めたとき、いつのまにか帰った夫が、いつのまにかシャワーを浴びて寝間着でベッドに転がっているのだ。

昨夜、パッと目が覚めた。1時43分。ベッドは空。果てて一階でそのまま寝ているのかと降りて行くといない。よっぽど楽しくてはしゃいでいるのだろうか。

そのまま二階に上がりベッドで目を閉じてていると玄関がガチャガチャいいだした。

「ただいまー」午前1時43分、誰に言っているつもりだ。

しかし、一向に階段を上がる音がしない。

まあいいや。確かに家にはいる。私はそのまま目を閉じた。

今朝起きると、ベッドはやはり空っぽである。やりおったな。

リビングにひっくり返っていると思い降りて行くと、シャワーあがりのさっぱりした顔で夫がおはようと起きていた。

「昨日の夜、遅くてすみません」

「昨日ではなく、今日だがな」

「え?」

「今日の1時43分でした」

するとゲタゲタ笑い出す。

「もうさ、ぶっちゃけちゃうとさ、寝過ごして終点まで行っちゃって、戻ろうと思ったらもう電車なくて、タクシーに乗っちゃった」

なんと。

「おいくら万円でしたの」

「七千円」

「ええ度胸しとるやないけ、妻の誕生日も25周年の結婚記念日もなんにもプレゼントしないで、そういうとこには使うんやな」

そこになんだか知らんがいつのまにか、ブランドのゴルフバッグもズボンも帽子もスクールも自分のものはちゃっちゃと買っておきながらというのは、控えた。

「ひーん、なけなしなんだよう」

「妻にはそのナケナシは使えないんだな」

「ひーん」

さすがに二日酔いで、朝食は食べないだろうと思いきや、しっかり厚切りトーストに目玉焼きとヨーグルトにトマト牛乳を平らげいつものように出社していった。

「ごちそうさまぁ、あ、そうそう、トンさん、今日、ゴルフスクールに寄ってくるから、ちょっと遅くなる。ご飯はウチで食べますんで」

丈夫っていいなあ。

 

私はもう一度眠った。