アスパラのかき揚げ
c朝食後、テレビを観ながらゴロンと床に転がっていたら、リビングと隣の実家を継なぐドアがコンコンっと鳴った。
「おはようございます。お裾分けです」
ギョロッと大きな眼を見開いて、母が新鮮なグリーンアスパラを持ってきた。
思わず立ち上がる。
ちょうど今見観ていた番組でアスパラの特集をやっていて、下の部分の硬いところは生のまま茶碗蒸しの具にすると、アスパラからいい出汁が出てすごく美味しいとやっていたところだったので大喜びする。
「わざわざ北海道から取り寄せたいいものだから美味しいわよ。孫ちゃんに、ここにベーコンかなんか巻いて焼くといいわよ」
「そうだね。今テレビでやってたけど、下の方は茶碗蒸しとかかき揚げにするといいんだって」
「下の方は筋があって美味しくないでしょ、ベーコンで巻くといいのよ」
「輪切りにすレバいいんだって。繊維を切るから。あ、でもベーコンもね。塩もいいけどバター醤油とか、あ、でも新鮮だから素揚げでも美味しいね、これ」
「まあね、ベーコンがいいわよ、やってごらんなさい」
ベーコンイチ押しの母。
そうだね。ありがと。
頭の中で、下はかき揚げと茶碗蒸し、上はベーコンだなと思いながら礼を言う。
昼、息子が急に帰ってきてた。
「腹減ったー。休講入って4時間空いたから。なんか今食べられるもんない?」
カレーライスを温め直して食べながらまだ足りないと言うので冷凍のアジフライをあげてやる。そうだと思いつき、さっきのアスパラの数本、下の方だけポンポンと1センチ幅に切り、天ぷら粉にくぐらせ揚げてみた。
ついでに頭の柔らかいほうも天ぷらにしてアジと一緒に息子にだす。
「うんめえ、なんだこれ」
アスパラだよ。おばあちゃんが持ってきた。こうやって食べると大丈夫でしょ。
うまいうまいと平らげる。これでアスパラ嫌いがなくなったな、次はベーコンで出してやろう。
まだ足りないと言うので冷凍しておいた筍ご飯をチンして追加した。
「アスパラのかき揚げにアジフライに筍ご飯、旬の昼定食みたいだ」
ほんとだ。
今日は皮から茹でて筍煮るぞっと勢い込むのも春の一コマ。
私のぐうたらテレビからの情報と、そこに飛び込んだ母からのお裾分けに息子の偶然の帰宅。そこに冷凍庫の中のものがうまいこと重なってできた「なんちゃって春御膳」も、これまた春の一コマ。