お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

必死の午後

カレー粉を使ったカレーを作ってみようと取り掛かる。

これまでフレーク状のルウなら使ったことがあるが、カレー粉、小麦粉から作ったことはない。味の想像もつかないが、きっと美味しいに違いない。手をかけるのだから、それだけのものができるはずだ。

カレー粉の缶を買いに行くところから始まる。赤い缶のカレー粉。それと玉ねぎ人参じゃがいも、豚肉。我が家はいつも鶏肉で作る。しかし、缶の裏の作り方には豚肉とあった。初めてなのでここは言われたとおり豚肉にした。

クックパッドで見ても、缶の裏を読んでも、作り方はだいたい同じだった。要するに市販のルウを入れるところを、サラダ油で炒めた小麦粉にカレー粉を足して練り、そこに煮汁を少しづつ足して薄めてのばし、野菜を煮ている鍋に入れるのだ。最後に砂糖と塩で味を整えて完成。

なんだ、勢い込んだ割には簡単なんだ。

買い物から帰ると、すぐ台所に立つ。やって見たくてワクワクしているのだ。

時刻は1時。昼ご飯はまだだが、先に作って後からゆっくり食べよう。

さっさと作って午後はビデオで映画でもみよう。

簡単だと、たかをくくってはいけない。初めて挑戦する謙虚さを忘れて自己流に走るとろくなことはない。特にカレーに関しては、過去、何度も痛い目にあっている。

今日は基本に忠実にいこう。

じゃがいも一個とあったら一個。玉ねぎが一個半とあれば、ちゃんと一個半。玉ねぎは半分は微塵切り、残りはザク切り。めんどくさいが、この微妙な切り方の違いが意外と大切なところかもしれない。言われた通りにする。人参、豚肉それぞれを切り、炒め、肉は一旦取り出し、野菜ジュースも入れ、コンソメ、少しのトマトピューレにウスターソース、カシスジャム。灰汁を丹念に丹念に取り除く。

最近ここまで丁寧に灰汁取りをしただろうか。

雑に作ることが増えてたなぁ。

ラーメン屋のオヤジのように、鍋につきっきりになっていると、なんだかすごく丁寧な暮らしをしている気分になって心が落ち着く。

煮込んでいる側で別のフライパンにカレー粉と小麦粉を炒めて待つ。煮込みは中火で20分以上。箸で突っついて、野菜が柔らかく煮えていればいいってもんじゃない。タイマーをかけて30分、コトコトコトコト。

手間暇かけるってこういうことよねと自画自賛しながら待ち続け、ついにルウを入れるときがきた。

市販のと違って香辛料の強い、ツンとした、インド屋のカレーの匂い。

さぁさぁ。本当のカレーってどんなの。

待ちきれず、溶けたところで、すぐ、味見をした。

か、辛い・・・。本格的の味だ。

カレーをこよなく愛する人のサイトを見たのがいけなかった。カレーを本当に好きな人は本場のあの、ピリリとしたものをカレーと呼ぶ。

私は大事なことをすっかり忘れていた。

うちの男子は夫も息子も甘いカレーでないと食べられない、お子ちゃま舌なのだった。

味は確かにいい。おそらく、姉などは「これぞカレーよ」と大喜びするであろう。

しかし、どんなにいいものができたとしても、食べる奴らのレベルにあってなければ意味がない。

私は慌てた。どうしよう。いや、待て、これまで何度も、軌道修正を図ろうと焦り、思いつきで色々入れては失敗をしてきたではないか。よく考えるんだ。今回はとりあえず作ったものはレシピ通りなのだ。うまくやれば、いいところへ着地できるはずだ。

トマトピュレを少し足す。だめだ、酸味が強くなるだけ。この刺激を消さないと。じゃがいもをチンして潰して入れた。やや、穏やかになった気もするが、ほぼ、変化無し。りんごのすりおろしを入れる。お。これはマイルドになった。が、りんごの香りが残るのでこれ以上は入れないほうがいい。ミートソースの残りを大きいスプーンに一杯、・・いやもう一杯。少し、食べやすくなった。カシスジャムをたす。これもプラスに作用した。辛味はどうにか許容範囲に落ち着いたが、この刺激がなんとも。

そりゃそうだ。カレーは刺激があってなんぼの食べ物だ。それを消そうとするのはもはやカレーから離れていくことになる。

牛乳を足した。おお。ぐっと食べやすいものになった。ぐっとカレーから離れたが。

やむを得ん。ここはカレーに固執してはいかん。とりあえず、「食べられるもの」にするのが今の課題だ。

冷凍保存用のジップロックにカレーの具を避けて、液体の部分をすくい上げて取り分ける。鍋の半分以下まで減らした。そこに牛乳をトポトポトポトポそそぎいれる。生協のフレーク状のホワイトシチューのルウがあった。袋の裏面を読むと、ブイヨン、脱脂粉乳、果物、豚肉エキスとある。スプーン一杯、入れてみた。祈るような思いでぐるぐるぐるぐる搔きまわし、恐る恐る味をみた。すると、鍋の中身は、カレー風味の、それはそれは美味しい牛乳スープへと変化していた。

ほのかにグラタン風味なのはホワイトシチューの素が聞いているのだろう。

とにかくお子ちゃまが少し背伸びした「ホワイトシチュー、カレー風味」が出来上がった。

美味しい。なぜか、美味しい。

これを成功というのか、失敗というのか。

また、2度とは作れない料理をこさえてしまった。

 

時刻は4時。へとへとだ。

この間の集中力は我ながらすごかった。

パンを焼き、きゅうりとハムを挟んでマヨネーズをかけてサンドウィッチ。

テレビでは「今日の出来事」と1日を振り返ったニュースと明日の天気予報が始まっているのを眺めつつ遅い遅い昼ごはんにありついた。。