お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

贅沢

イカを茹でた。

台所に磯の香りがする。酢味噌をかける。

キャベツをザクッザクっと幅広に切る。

鍋に敷き詰めて豚肉を広げて載せる。

トマトを切る。しらすをご飯にのせて納豆。

おしまい。疲れてご飯を作りたくないから、この前食べて美味しかった冷凍の赤魚の煮付けとナスとピーマンの味噌炒めとがんもどきと切り干し大根が一つに入ったパレットを自分用に買って、息子には何かフライでも買ってこようと出たが、ぴかぴか光ったイカが並んでいるのを見たら急に食べたくなった。

切るだけ。茹でるだけ。

それでも台所には磯っぽい匂いが湯気と立ち込める。

トマトを切ればトマトの。キャベツからはキャベツの。

土から吸い上げる何かが濃くなって野菜のエネルギーが強くなっている。

匂いなんだ。暮らしって匂いなんだ。

秋はさつまいもを蒸していた台所から、緑と磯の匂いがし始める季節。

もうじき、タケノコ、グリンピース、あさり、わかめ。

チン、も結構美味しいけど、あっという間にできて、いっぺんにいろんな匂いがレンジの中でこもる。

台所のこの、鍋やまな板から広がっていく匂いや湯気。

贅沢だな。

嫁ぐまで、この匂いは当たり前のように実家の台所に流れていた。朝には朝の。昼には昼の。夕方には夕方の。

今は自分が動かないと手に入らない。

自分で紡ぐ暮らし。

息子に夫に、私の暮らしを分けてあげよう。これが自然とある家にしてあげたい。

できるだけ。