ホッとした
夫の腹がへっこんだ気がする。
気のせいか。そうそう簡単に結果が出るものだろうか。
いやでも確かに、ワイシャツのパツンパツンだったボタン周りにわずかに緩みがある。まだ真っ平らには程遠いが、コダヌキくらいの張り具合になってきたのではないか。
「お腹、少しへっこんだんじゃない?」
玄関に立つ夫に聞いてみた。
「うん」
ちょっと嬉しそうに頷く。
特に何を工夫した覚えはない。
何がヒットしたのだろう。
ただ、何にでも野菜を入れたのと、鯖と納豆をたくさん食べさせた。キャベツやキノコはざく切りにして冷凍し、スープでもホイル焼きでも炒め物でも煮物でも、とにかくぶち込む。
ナスでもピーマンでもなんでもかんでも放り込んでトマト缶で煮込んだものを置いておいたのも便利だった。ハンバーグにかけたりジャガイモやパスタとチーズとで食べたり、オリーブオイルを絡めたそうめんにも意外と合う。
そうそう、白米に麦を入れ始めた。これは、以前夫に「僕、御飯は白いのがいい」と言われ引っ込めた過去があるのだが、今回は本人も何かを感じているのか、黙って食べていた。麦の混じった御飯におとなしく大好物の納豆をかけているのを見ると気の毒な気もしたが、忘れたふりして貫いた。
しかし。麦飯以外はどれも特別なことでもなく、普段正月明けなどちょっと食べ過ぎが続いたなというときなど、これまでもやってきたことだ。それによって誰かが特別痩せた覚えもない。
はて。
「やっぱりそう?自分でもそう思う?お腹きついの、なくなってきた感じする?」
突っ込んで聞くと「もしかしてお腹出た?」と聞かれたときには「いいや、全く変わりない」ときっぱり答えたくせに、照れ臭そうに白状した。
「うん、ぶっちゃけ言うとさ、あっちにいたとき、毎日柿ピーとワインとチーズ食べてたから」
ヒョエエ。
知らなかった。それか。あのお腹の中身は。
つまり、へっこんだのは、私のおかげではない。
悪しき習慣がこっちに帰っててから、鬼嫁の目を恐れ、絶たれた。原因が削除され、結果が変わった。そういうことだろう。
2年で帰ってこれてよかった。そんな生活がまだ何年か続いていたら恐ろしい。
厳しく制限したわけでもない。チャーハンや餃子だって普通に出していた。しかし、そういった炭水化物をたんまり食卓に並べたときは「あぁ・・・」と内心、心穏やかではなかった。
わずかに凹んだお腹。
体がいい方向に向かっているんだとホッとする。
おそらく、このようすだとそうキリキリと厳しく制限しなくても、ちょっと気をつける程度で自然と元に戻っていくのかもしれない。
ちょっと気が楽になった。
糖質だとか揚げ物厳禁だとかになると、正直言ってこっちが辛い。
カレーライスやミートソースのお助け料理が使えない。
毎日定食スタイルというのも疲れてしまう。
よかった。そんなに気張らなくてもいいかも。
そんなわけで今夜はドライカレー。
・・・でも御飯は麦入り。