お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

それはやめなさい

昨夜、缶ビールの勢いにのって家族3人揃った夕食のテーブルで言ってみた。

「もう8年以上、毎週末試験を受けに行くか、家にいても試験勉強じゃないか。ずっと放ったらかしでつまらない。映画を見に行ったりスーパーに行ったりしたことないじゃないか。ちょっと待ってちょっと待ってって言いながら8年。もう、待てない。もう、待たない」

「家族のためなんだから」というので応援していたが、どうも取ろうとしている資格のうち、仕事に直結しているのは半分で、後の半分は「この資格もとってみよっかな」という彼本人の趣味的なものなのだということに最近になって気がついた。

 

奴はマニアなので、なんでもハマると周囲が見えなくなる。

息子が2歳半のころ、東京にサッカーW杯がきたときには、日本列島予選縦断の旅に毎週家を開けた。毎週毎週すべての試合を観るために出かけていった。チケット代も交通費もばかにならない。週末の家族の時間もない。たまりかねて泣きべそかきながら「もうやめてくれ」と訴えると、「ああ、俺はこんなに大事なトンさんをなかせてまでなんてことしてたんだ」とがっくりうなだれた。なんだか我儘言い過ぎてしまったかと、こっちも少し反省してうつむいていると、彼は明るく言い放った。

「わかった、もう、しないよ。でも、トンさん明日の試合だけ、行かせて。これで最後だから」

・・・。そして最後ではなかった。

今、その全ベクトルが資格取得に向かっている。

「トンさんと息子の生活のためになるんだから」

「そんなの頼んでない。将来のための投資より私は今の一緒に過ごす時間が欲しい」

「まあ、あと2年待ってよ」

「待てない、待たない、もういい奥さんやらないっ、もう私はいつまでもじっと待たない、ひとり旅も行く。いつもそういうとやめなさいっていうけど、行く、どこにでも行く。もう待たない」

そうだそうだと静かに頷く息子。

「もうね、ボーフレンドも作る、いろんな仲間のなかに行って遊んでくる」

「それはやめなさい」

息子がいう。

「それはやめなさい。不倫だと勘違いされる」

あ、そ、そう?

息子が慌てて肝心の夫はテレビを観ながらフフフとヘロヘロ笑っている。