お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

小さなフフフ

土曜日。息子はアルバイト、夫はなにやらの資格試験に出かけている。

旅行に行くというのは、ある意味、強制的に思考をリセットしてくれる効果があるようだ。私の場合。

たった二泊三日だが、山、寺、バス、観光客、朝食ビュッフェ、喫茶店でのピザトーストメープルシロップとバターのたっぷりかかったワッフル、そして母との会話。

日常からかけ離れていた。

朝目覚め、ご飯なんにしようと考えないだけでも大きく違う。

雨降る中、高雄の緑と土の濡れた匂い。何度もフンガフンガと息を吸う。

「あーいい匂い。私この匂い大好き」

スー、ハー、スー、ハー。

吸っても吸っても吸っても、もっと吸いたい。

ここっきり。持って帰れないこの空気。

 

東京のこの家に戻ってきた。

ここでつい何日か前まで抱えていたモヤモヤは確かにまだあるのだけれど

えーっとどこまでどんなふうに、モヤモヤしていたっけ。

なにか、もっといつも頭の片隅に抱えていた思考の続きがあったはずなんだけど。

なかなか解けない問題で、あとちょっとで答えが出そうなとこまできていて、でもどうしても解決できない、そんな案件を抱えていたはずなんだけど。

 

3日忘れていたらなんだったか思い出せない。

ちょっと怖い。何か深いことを抱えていたはずだったのに。なんだったろう。

このまま忘れ去られたまま新しい日常を続けていってしまおう。

どうでもいいことなんだ、それだけのことなんだ。

大抵のことは、どうでもいい。

 

帰ると玄関の上に大きな黒い紙箱が乗っかっていた。

「これ、なんじゃ?」

「親父がゴルフシューズ買ってきた、あと、パターと」

ふふふ。奴め。

奥さんが家を空けている間にささっと買うあたり、おかしくなってくる。

ゴルフスクールが終わって、嬉しくなってシューズとパターを買おう、今日は持って帰っても「なにこれ」って言われないし、買っちゃおう。

下駄箱の上にいかにも「買いました」と言わんばかりに黒い靴箱。

ふふふ、深刻なことなんかどうでも良い。

これからは、こういう日常のニンマリを拾い上げて味わっていく。