お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

庭で

庭で二世帯同居の母が草むしりをしていた。

黙って私も庭に出て自分の方の草をむしる。

「あら」

「これ、まだ大丈夫って思っているとすぐ伸びるんだよね」

それからしばらく会話もなくしゃがみこんでクローバーやどくだみ摘む。

「これなんの根っこかしら」

見ると、雪柳のところの土をスコップで掘り返していた母が長い根っこを手にぶら下げていた。

「知らない。なんだろね」

「しだれ桜をここに埋めようと思って掘ってたら。・・いらないわ」

ぽいっとコンクリートの地面にほっぽり投げた。

「なんの花かわからないけど、いらない。申し訳ないけど」

思わず

「そうなのよ。私も抜きながら、ごめんって思うのよね。みんな同じ植物なのに」

沈黙。

なにまたそんなくだらないこと言ってんだと思ってしらけているのかもと、私もそれ以上は続けない。

「今日、衣替えしようかと思ってたけど、なんかやる気出なくてやめたわ」

「そうよ。土日はやめなさい。できないのに無理してやっても誰も褒めてくれないわよ。孫ちゃんと旦那くんに迷惑かけるだけよ」

「そうだね。やめたわ」

また沈黙。

「あ、そうだ、段ボール、業者さんに電話して水曜には取りに来てもらうから」

玄関脇に積んでおいた、夫の引っ越しの際にでた空の段ボールを潰した山を、不用心だと注意されていたので、報告をする。

「旦那くんもさすがにお母さんの言うこときいたわね」

うん。うっかりしてたんだと思うよ、すぐ電話してた。

「あなたもそろそろ終わりにして中、はいんなさい。お姉さんと違ってあなたは自分でできると思っているほど、できないんだから。・・・・あなたは何かすることなんかより、ただしっかり生きていてもらわないと。」

芝桜を植え終わった母は一個余ったから、ここに植えると、私のほうの庭に植えて水をまいて家に入っていった。

愛されているんだなぁ。