お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

新入生

昼過ぎに夫からラインがはいった。

[ごめん、飲み会はいっちゃった 食事一緒ダメだ]

ちょうど草むしりに熱中していたところだったので、あら、助かったと思う。よっしゃ、きょうは息子と二人の夕飯なら簡単だわい、心置きなく熱中しよう。

[了解いたしました。]

速攻返事を打ちながら安堵する。部全体の歓迎会はもっと先だから、おそらく今日のは個人的に誘われたのだ。飲みに行きませんか?なのか、飲みに行く?なのか、はたまた飲みに行こうぜなのかはわからないが、とにかく夫と飲もうと自発的に思ってくれる人がいるということだ。よかったよかった。お友達がいるようだ。仲間がいるってことだ。

たっぷり草むしりをし、それから掃除機をかけ、セーターを洗い、買い物にいき、早めに風呂に入る。

今夜は豚肉とピーマンの炒めたのと作り置きの肉じゃがと・・茄子の煮びたし・・でいいや。

ラジオを聴きながらのんびり湯船につかる。

夕飯時、息子に言う。

「父さん、今日、飲み会なんだって。よかった」

「なんで、酒飲んでくんだろ」

「だって、誰か飲みに行こうってさそってくれる人がいるってことでしょ。よかったよ」

「一年生かよ」

食後、二人でアイスを食べ終わった頃、玄関の扉の開く音がした。

「ただいまぁ」

え・・。あれ、声がぜんぜん酔っていない。

時計を見ると8時過ぎ。早すぎる。どうしたんだろ。楽しくなかったのかしら。それともやはり、お義理で誘われただけで、盛り上がらずサクッと解散だったのか。

「おかえり。」

「ごめんな。飲み会はいっちゃって」

「いいよ、そんなの。・・・どうしたの、あんまり食べられなかったの?」

「え?食べてないよ」

えぇっ?そんなに短時間でお開きにされちゃったの・・やはりお愛想程度の歓迎の印だったのか・・・。

「飲み会、食事はあんまりでなかったの?」

「え?明日だよ、飲み会。だからお母さんに一緒に夕飯食べようって言われてたの、無理になったってラインしたでしょ」

あぁ・・・。そういうことか。そうか、そうか。

 

ほっとしたら急におかしくなった。

「今日かと思った、ご飯、用意してないよ」

ゲラゲラ笑いながら言うと今度はあっちが動揺した表情を見せる。

「あるある、すぐ出来るよ」

息子に出したのと同じものに鯖味噌煮の缶詰を追加してお盆に乗っけた。

「わーい美味しそう。ごめんね、作ってなかったのに二度手間になって」

夕飯がなかったというのに上機嫌で食べ始めるのを見ながらその曇りのない笑顔と声にまたホッとする。

よかった。会社、辛くはなさそうだ。

一年生かよっ。