乙女、女子会にいく
母が今日からお友達とお泊まり。
横浜のホテルに集まって二泊三日おしゃべりをして元町をブラブラするそうな。昔っから私より女子力が高い。
お洋服も靴も好き。
動物はフワフワしていて可愛らしい物は好きだけど、爬虫類はきらい。自分が巳年のくせに「あれは気持ち悪い」と言い、犬猫も毛足の短い種類のもや愛嬌のあるブルドッグを「かわいそうにねえ」と器量がよくないと気の毒がる。
ハンサムがすき。
レースが好き。
恋愛映画が好き。
わかりやすいものが好き。
「この洋服、おかしい?」
「いや、かわいいよ」
「そう?かわいすぎる?」
「いや、ちょうど良くていいかんじ」
「ほんと嫌になっちゃう。べつに行きたくないのよ横浜なんか」
毎回そういいながら、帰って来たときには元町で買ったあれこれを嬉しそうに見せにくる。
「もうさ、なかなか食べるお店がきまんなくって、みんな言いたい放題で、わたしだけよ、おとなしくしてるの。あれが年をとるってことね」
そして女子高生のようにひとしきりしゃべってやっと彼女の「お泊り」は終わるのだ。
いつからこんな乙女なひとだったっけ。
父と姑が生きていて母親現役まっさかりのころ、あの人はもしかしたらものすごく、つっぱって頑張っていたのかもしれん。
「はいはいはいはい、かわいいかわいい。出しゃばりすぎずにかわいいよ。せっかく行くんだから楽しんでおいで」
「ほんと、やんなっちゃう」
どっからどうみてもウキウキ弾んでいるその様子を、隠し切れていると大真面目にやっているから、これまたかわいい。
「じゃあね。お姉さんのご飯は用意してあるから。シャッターもおろしていくから」
はいはいはいはい。
今夜は修学旅行ですな。