お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

雨とぼんやり

そして、午前中、使い物にならず。

イケアの椅子にどっかと腰掛け、足をベッドに乗っける。肌寒いのでガウンを肩からつま先までスッポリ覆うともう、極楽。

幸せだ。

肉ジャガもたっぷり残っているし、にんじんシリシリ、枝豆、ブロッコリーの茹でたのもちくわの磯辺焼きもある。トマトもあるし。ふふ。夕飯は何かお肉でも焼けばいい。

心置きなく、睡魔に魂を持っていかれよう。

 

母が来た。階下から叫んでいる。

「いるの?いるの?ねぇ!ちょっとお話があるんですけど」

私はないんですけどぉ・・・。

「はいはい、なあに」

階段を降りて行くと、下から見上げている母がいた。白いレースのカーディガンにお化粧をして、おめかししている。

「これからお姉さんと美術館に行ってくるから。それで来週、おばあちゃんのところに行きたいんだけど、あなた、ついて来て。いつならいいい?」

「金曜は歯医者だからそれ以外ならいつでもいいよ」

「いろいろお世話になるから職員さんたちに、お中元で鳩サブレ持って行こうと思って。重いから一緒に持ってよ」

「了解致しました」

「じゃ、行ってくるわ。あなたも今日は来週に備えて体をしっかり休めてくださいよ」

「ヘェヘェ。いってらっしゃーい」

 

あぁっつ。深い眠りの国に行くところだったのに。眠りの国の扉は閉じてしまった。

一度閉じてしまった扉は、こうなると当分、開かない。ぼんやりした脳だけが置き去りに、睡魔様はどこかにいってしまった。

 

膨大な時間とやる気のない身体と脳みそが残された。

シンとしている部屋で昨日塗ったマニキュアを見る。

さすが300円、禿げている。一夜で魔法はとけた。

シンデラのかぼちゃの馬車みたい。

お母様とお姉さまはお出かけで、私はお留守番。あら。ふふふ。

禿げたマニュキュアの指は一気に生活に追われている主婦の指になっていた。

「除光液、除光液・・・」

脱脂綿にたっぷり吸わせて、一気に落とす。

するっと、もとの姿が顔を出す。

馴染む。やっぱり私は自分のこの指が一番好き。