予期せぬこと
今朝降りていくと息子はまた、リビングで朝を迎えていた。
枕にしていたクッションを抜き取り、シャッターを開ける。ガクンとなったのとシャッターのガラガラという音で目を覚ます。
「おはよう」
「おはよう。お風呂はいっといで」
シュウマイの残りと枝豆とリンゴと生卵。味噌汁なし。牛乳。
お盆にセットしてゴミを出しに行く。
洗濯物が上がり、ハンガーに干した。風呂上がりの息子にベランダに干してきてと頼むと一瞬、眉間にしわを寄せ
「今?」
と言う。一階で寝てしまったバツの悪さからいつもより抵抗が弱い。そこに漬け込み強気で言う。
「そう、今」
実は、月曜のあの頭がフラフラしながら食料調達に行った時、道で派手にすっ転んだ。両膝を激しく打ったが、歩けた。骨が弱いのでこう行った些細なことですぐ折れる。折ったか、と一瞬思ったが、こうしてそのまますぐ立ち上がり、どうにか歩けるということは折れてない証拠だ。知らないうちに骨も丈夫になっているのね。ぼうっとした頭で呑気にホッとしたのだった。
日に日に痛みは薄れていくが、階段をどうしてもうまく上がり降りできない。左の膝の打ち所が悪かったのか、重心をかけると「う」となる。片足片足、ゆっくりやれば上りも下りもできるが、時間がかかってじれったい。
息子がいるうちに、使ってやろうという魂胆なのである。
階段から降りてくるなり
「干してきたけど、なんか曇ってて、今にも降りそうだよ」
「大丈夫。今日は曇ってるけど降らないってラジオで言ってた」
「母さんはすぐそうやってなんでも信じるからな。そういうことだと、騙されるぞ」
「そう。なんでも信じるの。『もうやらない』とか。『今日は風呂に入ってから寝る』とか。それでいつも騙される」
すると急に大きな声になって言った。
「騙されるという表現は適切ではないな。あれは事故に巻き込まれるっていうんだな。」
事故なのか。
「そうか、車の玉突き事故や火事の貰い火みたいなものか」
「それもちょっとよくないな。誰も予期できなかった非常的事態に、たまたま、居合わせてしまった・・・ということだな」
ふーん。そういや私が道端で転んだのに居合わせた人達も、びっくりして一瞬固まってたっけな。
予期せぬ事態に巻き込んで申し訳ない。