お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

ばっかじゃのう

朝、寝室で起き抜けにぼーっとしていると、息子も今、目覚めたらしくやってきた。

「おはよう。服を着たまま寝てしまった」

昨日着ていた格好そのまま突っ立っている。よくあんな窮屈なズボンを履いたまま寝られるなぁ。

「なんか、この部屋入ってくると、俺の部屋より明らかに空気がいいんだけど」

「ここは女子の部屋だからな。いいからシャッター開けといてよ」

久しぶりにたっぷり寝た。時刻は8時半。外は晴れ。

気分よく部屋を出ると、息子がベッドにまた潜っている。

「こら、シャッターを開けたまえ。ダラダラするなら先、シャッター」

「へえへぇ」

そのまま二階のトイレを掃除し、自分のベッドを整え階段を降りていこうとすると息子が上がってきた。

「シャッター、開けさせていただきました」

「苦しゅうない。後で洗濯物も干させてやるからな」

「え・・。それはちょっと・・・荒すぎやしませんか」

「なにを言う。・・・ゴキブリへっぴり野郎・・」

「う。それは・・」

昨晩、壁に小さなゴキブリがいた。発見したのは息子だった。その怯えようは、尋常じゃなかった。ゴキブリ、ゴキブリ、と言って騒ぐだけでスプレーもかけられない。仕方ないから私がやると、壁際に椅子を寄せてくれと頼むと、恐ろしくてそれもできないと言う。「じゃ、このまま私は寝る」と脅すとそれはもっと恐ろしいので、渋々屁っ放り腰になりながら椅子を運んだのだった。

果敢にスプレーをし、紙に包んで確保したのは息子より体重も身長も力も劣る母親なのであった。大学2年の男子が!母に!

「文句なかろう。干すように」

息子が風呂に入っている間に洗濯機を回し、洗いあがったものをハンガーに吊るす。脱衣所は浴槽からの湿気がこもっているし、のんびり悠長に風呂場から聞こえる鼻歌から、これはしばらくかかるなと、結局自分でベランダに干しに階段を登っていった。

あれ、ベランダに何か干してある。

見ると、昨日部屋干ししていたシャツが二枚風に揺れていた。

洗濯物を干せと言われて、息子が干したのだろう。

どっちとっくに乾いているのに。

男子はおもしろい。