リンゴの箱
そして一週間たった昨日の月曜日。
やっぱりやる気のない朝。日曜はお歳暮手配をしに渋谷に行ったのだが、思った以上に人混みに疲れた。
渋谷 の街は少し変な臭いがして、街には人がごった返し、たった3駅乗ってきただけなのに、いつもの生活圏とは別世界だった。
朝食後、ホットカーペット。食器も洗濯も手付かず。今日は何にもしない。
そこに宅急便が届く。今度はりんご。先週長芋を送ってくれた知人は毎年この時期、信州のお芋とリンゴを送ってくれる。
玄関にはまだ、おが屑に埋まった長芋の箱が蓋を開けたまま置いてある。そのすぐ隣に置いてもらった。
箱を開けると甘酸っぱいような甘いようなあの香りとともに、真っ赤なリンゴが顔を出す。
心が弾む。これも配りに行こうか。あんまり続くのもどうなんだろう。とりあえず母のところに持っていく。
「ウチで注文したのが届いたばかりだからいいわ」持ち帰った。
狭い玄関がダンボールだらけになってしまった。おが屑を庭でビニール袋に移し、残った芋を取り出してダンボールをたたむ。もともと不器用なくせに、身体がしんどくて雑にやったのとで、芝の上におが屑がたくさん散らばった。
仕方がないので箒と塵取りを持ってきて集める。ついでに庭の落ち葉も集め袋に入れた。
柿の木から落ちた真っ赤な大きな葉っぱをカサカサとかき集めながら、こんなにきれいな葉っぱ、なにかステキなものにならないかと思うが、ステキなものを思いつかない。
澄んだ冬の空気が気持ちいい。
カサ、カサ、カサ。
湿った土と乾いた葉っぱの混じった匂い。
りんごが届いて、長芋の箱を潰し、溢れたおが屑と落ち葉を掃き集める。
空は青い。柿は朱赤。
暮らしってこういうものか。
流れるように、流れにのって。
部屋に戻るとそのままシュウマイを作った。洗濯ものがあがり、ハンガーに干す。二階のベランダに行ったついでに二階のトイレを掃除した。流れで一階のトイレもきれいにする。
肉だねを捏ねたボールと朝の食器を洗いながら、母に粗大ゴミの申し込みを頼まれていたことを思い出し電話した。
電話に出てきた人がとても感じよく優しかった。
知らないうちに部屋も庭もきれいになり、面倒くさい用事も、やらなくちゃならない家事も済んでいた。
りんごが運んできた愛の波動。
ゆっくり羊羹とお茶を飲む。
「この前は封書にしたけど、今度はハガキでいっか」
受け取ったそのときは面倒に思ったお礼状、また便箋で書いて出しに行く。