お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

長芋

先週の月曜日、葬儀の翌日、朝食が済んでも動く気になれない。

テレビもラジオも消しホットカーペットにごろんと寝転んだ。洗濯物も食べた食器もそのまま。トイレ掃除も風呂掃除もエンジンがかからない。もう今日はお疲れさんの日で一日中何にもしないでいいことにするかなぁ。

目を閉じてグダグダしていると宅急便が届いた。

大きな長い箱。長芋だった。

毎年、知人から信州八代の長芋が届く。箱いっぱいのおが屑の中に、1メートル弱はある太い立派なお芋がたくさん埋まっている。

箱をあけると檜のようなおが屑の香りが玄関にひろがった。さあどうしよう。私と息子だけではとても食べきれない。母のところに3本、ご近所5件に2本ずつ、新聞紙にくるんで持っていく。

お向かいのお婆さんは「おじいさんの大好物なんですよ」と庭で採れた柿をお礼だといってくれた。お宅にも柿の木があるから申し訳ないんだけど。いえ、今年のはちょっと渋くて。それならギリギリに熟すまで取らない方がよござんすよ。そうですか。

斜め向かいのおばさんも新聞紙の筒を見るなり、両手を胸のところで組んで「あらぁ!」と大喜びしてくれた。「まぁ、去年も美味しかったわよぉ。いいの?今年も」「はい、たくさんと届いたので」。

となりのおじさんも「お、今年も来たの。こりゃ立派だ」と目尻を下げ、裏の奥さん達も「おいしいのよねこれ」と受け取ってくれた。

配っているうちに元気になってくる。笑顔をもらって会話してなにかいい波動をもらって元気になる。

弾んだ気持ちのまま家に帰るとすぐにお礼状を書いた。

受け取った瞬間より、みんなのところを一回りして嬉しさが増している。

お芋はネバネバパワーだけじゃない、見えないものも連れてきた。