息子にはしばらく言わない
息子は予測通り、今朝も一階で朝を迎えた。
昨夜テーブルに朝食を用意し、声をかける。
「ここ置いておくから。出かけるとき声かけてね」
「さては俺のことが心配なんだな。実は愛しているのだな」
「愛してるよ。だからこそ、起こさないからね。遅刻でもなんでもして痛い目にあうがよい。」
今夜は二階で寝る。俺はベッドが大好きなんだと言うのを、そりゃ初耳だと聞き流し先に寝た。
いつもの習慣で4時半に目が覚める。
どうなったかと階段から下を覗くと明るい。息子のベッドを見るとぺったんこ。この後に及んでやりおった。
黙ってベッドに戻る。今日は腹をくくってなりゆきをみよう。
寝ていたようだ。
「それじゃ、行ってくるから。朝ごはん、ちゃんと食べた」
「すべてお見通しだ。すらっとぼけんな」
時間ないんで、行くから。
逃げた。
ずいぶん前に急に壊れて使い物にならなくなったブルーレイディスクレコーダー。前日までは使えていたのに、ある朝いきなり「ハードディスクを認識できません、接続を確認してください」と文字が現れた。どこをどういじくっても、配線を確認しても、機器を認識してくれない。壊れるときっていうのは突然やってくるというが、本当だと、あきらめてそれきり、使うのをやめた。
今朝、テレビ裏に掃除機をかけていると、ふと根拠もなく、意外と動いたりして・・と思った。
あのときは疲れきった頭で、もう手は尽くしきったと思ったが、今なら違う発想が湧くってこともある。
駄目元で、そのままそこに座り込み、再チャレンジをした。
やっぱりだめか。HMDケーブルを抜き、USBに変えてみたり、設定からやり直してみたけれど、だめ。そうそう、うまいこといかないか。
このボタンなんだっけ。一度もつかったことのないボタンを何気なく押してみた。
じじっじじじじ・・・。
この聞き覚えのある反応音。
やがて、何ヶ月ぶりかの懐かしい画面がぱっと現れた。
なぜか直った。なぜこのボタン?
ぬか喜びじゃないだろうねと逸る気持ちを抑え、録画番組一覧を見る。あるではないか。ひとつ前の朝の連続ドラマに、映画に、ちゃんと残っている。タイムマシーンみたいだ。
どういうわけで、一晩にしてこうなったのか、わからないが、我ながら、よく探り当てた。
うれしい。ボーナスの使い道から10万円分、浮いた。
しばらくこのことは、息子にはご内密にしておこう。それくらいは許されるだろう。
ふふふふふ。ニヤケがとまらない。
まずは、来週帰ってくる夫のために、下町ロケット毎週録画、予約した。