お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

ちゃんとした人

「トンさん、トンさん、こんなとこで寝たら風邪ひくよ」

深夜1時半、夫に背中を突かれた。

私は最近、寝室のホットカーペットの上に羽毛布団を広げて寝るというのにすっかりハマっている。息子がリビングのホットカーペットで朝まで居眠りをするのをよしとしてないくせに、実は母である私が、二階で堂々と似たようなことをしているのだ。

ベッドに入ると「寝なくちゃ寝なくちゃ」と思ってなかなか寝付けない。本を読んでみたが今度は「ちゃんと読まなくちゃ」と内容を頭に入れることに脳みそを使って、却って頭が冴えてしまう。眠りというのは、私の場合、「ちょっとだけ・・・」と仮眠のつもりで目を閉じると、そこから思いの外、ぐっと深い眠りにつながる。そして、うたた寝のはずだったのが、気がつくと朝の4時半だったりするのだ。

導眠剤より、こっちの方が翌朝もスッキリしている。何より、暗示なのかもしれないが、「アレをやれば、今夜もすぐ眠りにつける」と思うと安心なのだ。

「トンさん、ちゃんとベッドで寝なさい」

夫が私の頭のところでしゃがんで言っている。

ここで寝るのが好きなんだというと、うちの妻はまた妙なことをはじめたぞと思ったのか、「じゃ、テレビの明かり、消しとくね」と暗くして自分の布団に戻った。

テレビじゃなくて、YouTubeの熟睡用のBGMというのを流していたんだけどなぁ。そんなことを思いながらまた眠りについた。

今朝。息子のバイトに合わせていつも通り、4時半に目が覚めた。

しかし、何かいつもと違う。

見るとカーテンがきっちりしまっている。ふふふ。やりやがったな。

私は寝ながら月が見えるのが好き。二階の窓からはちょうど11時すぎくらいから月がよく見える。部屋の中に月の灯りがうっすら入ってくるのも好き。なので夜、カーテンを開けて寝るのだが、夫は防犯上、良くないと言って、いつもきちんとしめる。

そうだった、そうだった。奴がいるってこういうことだった。

転勤する前は、この攻防戦が毎晩繰り広げられ、私が開けたまま寝ると、夫が夜中にそっとしめる。そしてついに、この窓のところだけは、カーテンを閉めては嫌だと主張し、それをお互いの妥協案とした。

今朝も、ここだけはの小さな窓はカーテンは開けっぱなしになっていた。

夫はちゃんとした人だ。

今日も家中の電球をチェックして、切れているところのワット数を調べて買ってくるという。息子も私もそう、生活に支障がないので、しぶとく、放置していた。

玄関に置きっぱなしにしていたリンゴの箱も階段の踊り場へと移動された。

今度は冷蔵庫に貼ってあった電気ガスの料金表をじっと眺めている。

「何か?」

おかしくなって、わざと強気に言った。

「何かうちの電気代にご不満でも?」

「いや、別に、なんでもないよ」

「やらし。今、チェックしてたでしょ」

夫は笑ってそんなことないと言って電球を買いに行った。

 

あれ、もしかして、あの電気代チェックは、毎晩毎晩、ホットカーペット、やめろよっていうことだったのかしら。

やめないもーん。