お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

お達しが出る

「母さん、明日明後日、何か出かける用事ある?」

「ないよ、何か頼みたいことあるの?」

「よかった」

銀行の払い込みか、買い物か。なんだろう。

「明日から台風が来るから家から出ないようにしてくれ」

あ・・。そういうことか。

「わかった」

「頼んだよ」

 

こんなことは息子が高校の頃から始まった。

夕方、買い物に出たついでにスーパーの二階に上がって台所用品売り場をうろうろしていた。特別買うものがあるわけではなく、便利グッズや調味料入れなどを「へぇぇ」と冷やかしていたとき、学校から帰宅した息子から電話が入った。

「今、どこ?」

「あ、おかえり、今スーパー。いつ帰ったの?」

「一時間くらい前。遅いからどうしたかと思って」

「ごめん、寄り道してた。これから買い物して急いで帰るから」

「いい。急ぐな。急ぐと転ぶから。ゆっくり帰ってくるんでいいから」

これが親子逆転の始まりだったように思う。

私が母親としてと気負っているより、夫も息子も、はなから期待をしていない。

 

「あ、ディズニーランドのお泊りなんだけどさ」

続けて息子が言う。

「あれさ、初日は俺のバイトのあと合流して、5時から入場してパレードとか見て翌日、午前中だけ遊んで帰るって予定だったじゃん」

「うん」

「あれさ、1日目、やめて、ホテルでまったりでもいい?バイト、意外と足が疲れるなと思って。」

いい?ってこのプランを立てたのは息子自身じゃないか。私はまったり大好き人間だから願ってもない。内心、最近の体力では夜のディズニーランドもついていけるかと、少し心配になっていたところだ。

「あ、でもかあちゃん、楽しみにしてたか。お土産とか買いたかったら、ホテルにもディズニーグッズ売ってる店もあるから。次の日、帰る前にイクスピアリに寄ってもいいし」

私は彼が思うほど、ディズニーランドに盛り上がっているわけでもないし、お土産を買うのを楽しみにしているわけでもない。どちらかといえば、夫と息子の夏の思い出になればいいなと思い、若干、しんどいけれど、久しぶりに家族でのイベント、楽しもうといったところなのだ。

この企画も息子が言い出したのだ。私の方こそ家族サービスのつもりでいた。

もしかしたら、息子は息子で、いつも家に居る私にサービスしての発案だったのか。

いや、しかし。それは買いかぶりすぎか。

ランドに行きたいと言い出した彼が楽しみにしているのは見ていて明らかだ。

 

どちらにしても。

台風だから外出するなと言い、一泊二日の1日目はホテルでのんびりに変更するがいいかと言う。

子供に見えたり、大人に見えたり。

男の子ってわからない。