決死の覚悟の二往復
本日、検診。歩いて15分の病院に11時半に予約が入っている。
猛暑に家を出るのは決死の覚悟だ。さっと行って、さっと帰りたい。
荷物をできるだけ身軽にしたくて、カードや小銭や領収書でパンパンになって思いお財布から現金と診察券、保険証、Tカードだけを別の財布に移し替えた。今日はiPadも本も持たず、とにかく体力の消耗を最小限にしよう。
足が火傷するような暑さの中、たどり着き、受付を済ませ、診察もすみ、会計。
処方箋とカルテを会計に提出。月をまたいだので保険証の確認があるはず。出しておこう・・と思っているところに
「保険証、お持ちですか」
はい、持ってきました、今・・得意になってささっと出した・・・ん?・・あ。
図書館のカードだ。間違えて持ってきてしまったのか。
念のため、財布の中を引っ掻き回すが、保険証はない。あるのは図書カードのみ。
「あのう・・忘れてきてしまって・・後日でもいいですか」
「困ります。あとは実費で払っていただくか」
「するとどうしたらいいでしょうか・・」
「申し訳ないですが、今日中にもう一度持ってきていただくしか」
クラクラした。これから、あの灼熱の道を戻ってまた、もう一往復するのか。
なんだかわからない書類に住所と名前、携帯電話の番号、そして拇印をさせられる。お金はきっと払いますという誓約書のような物らしい。
「ではこれをお預かりして、こちらはそちらのお控えです。お薬も会計も保険証を持ってきていただいてからということで」
仕方ない。もう一度戻る。
エアコンを消してきた家は、ここも灼熱。麦茶をごくごく飲んで、保険証を持って再度、出発。
無事、たどり着いた時には朦朧としているのが自分でもわかった。
すぐに会計窓口に行かず、しばらく待合室で涼む。
横になりたい・・・。虚ろな目で大きなテレビをぼーっと眺める。
ヨタヨタと会計に行き、名前が呼ばれるまで待つ。
「・・・・さん。・・・さん」
はっ、呼ばれた。慌てて走って行くとめまいがした。
意識がぼうっとしていて、お釣りを財布に入れずに立ち去ろうとするのをまた呼び止められた。
「暑いですからねぇ」
と笑われた。
会計が済んでももうしばらくそこに留まる。とてもじゃないが、今すぐまた外に出る気になれない。外に行きたくないヨォ。
よしっ。気合いを入れ、決死の覚悟で立ち上がり、歩く帰り道。
あぁ家が見えてきた。あとちょっとだ。
家に着き、すぐに服を脱ぎ、綿の部屋着に着替える。
氷水を飲み、エアコンをつけ、横になった。
あぁ・・・・。助かった・・・。
避難する家がある。逃げ場がある。
戻るところ、身の安全が確保できる家があることが、こんなにもありがたいと思ったのは久しぶりだ。
私は家族の逃げ場になれているだろうか。
そういう場所でありたい。