恥ずかしっ
今日は資源ゴミの日。昨日はダンボールをちゃんと出せた。
今、私はこの火曜、水曜にとても前向きだ。
苦手だった通常ゴミとは違う収集日も、今はむしろ、やる気満々で待ち構えている。
ダンボールは、面倒になるのでその日のうちに潰し、物置の隅に立てかけておく。家の外に出さない。ゴミが家にあるのが嫌で勝手口外に置いておいたが、よくよく考えると、古新聞は大丈夫でなぜダンボールがダメなのだ。お菓子の小さな箱なら家の中にとっておけて、みかん箱サイズになると、外というのはなぜだ。
家の中に畳んだ状態でおいてあれば、朝、取り出して持って行くだけ。わざわざ勝手口の鍵を持って狭い草だらけの裏の細い通路に引っかかりながら持ってでなくとも、ささっと玄関から出れば良い。なぜ、こんなことに気がつかず18年もこの家で暮らしてきたのだろう。思い込みというのは恐ろしい。
ダンボールのハードルを超えた私は気を良くして、ガラス瓶、ペットボトル、缶にも取り組んだ。空き瓶なんてそうそう出るものではないから、これも貯めてから持って行っていたが、それが面倒になる原因だった。
梅ごのみ、ジャム、酢、酒、醤油、その都度、出すのがいいということがわかった。
貯めて出す前提だと、どうしても、「出すときにもう一度、洗い直すから、今はささっと」と洗いも雑になり、周りについているラベルも剥がさずそのまま袋に入れてポリバケツに放り込む。すると、今度はたまったラベル剥がしが億劫になり、来週、また来週と伸びに伸びる。そうしている間に、また増える空き瓶。悪循環である。
空いたときに明日出すつもりで洗う。ラベルも剥がし、瓶も透明綺麗に洗う。綺麗な空き瓶なのでこれも家の中においておけばいいのだ。缶も同じこと。
分別用にもう一つ室内におくゴミ箱を買った。そこに綺麗になったペットボトルも空き瓶も缶も入れて、すっかり素敵な奥さんになった自分にうっとりする。
「今日からペットボトルは、こっちね。そのときラベルを剥がして、中身を綺麗に洗ってから入れてね」
息子にもダメもとで言ってみた。
ペットボトルはこれまで私が1人でゴミ箱からいちいち取り出し洗っていた。息子や夫に一緒に入れるなと、以前にもそれ用の袋を用意したことがあるのだが、「めんどくさい」と無視された。
しかし、今回は新しいゴミ箱を前に、妙なやる気に満ちている母のオーラを感じ取ったのか、すんなりOKしてくれた。
そして、今日。ニューバージョン体制での資源ゴミ収集の初日。これまで憂鬱だった水曜の朝も、なんせ、きちんと仕分けされている。あとは出すだけになった美しいゴミ達がもうスタンバイしているのだ。私は張り切って持ってでた。
三つのカゴにそれぞれを分けて入れていると、そこに一人暮らしの独身と思われる、若い男の子が大きなゴミ袋を持ってやってきた。
「おはようございます」
気分がいいので晴れ晴れと声をかける。
「あ・・・おはようございまーす・・」
めんどくさそうに、ボソッといい、彼はそのビニール袋をぽんっと投げ、この場を去ろうとした。
あれ。何で今日、そんな大きなビニール袋・・・普通のゴミは明日なのにな・・・。
そうか、主婦じゃないから、間違えたんだ。普通のゴミは明日だ。今日はなんたって缶、瓶の日だもの。教えてあげよう。
「あ、違うよ、今日・・」
すると、数歩行きかけた彼はくるっとこっちを向いて戻ってきて、強い声で言ってきた。
「なんで?いいんでしょ?え?今日、資源の日でしょ?いいんですよ、プラスチックの日でしょ」
こ、こいつ、威圧して誤魔化すつもりか。透けたビニールからお菓子の袋やアイスやプリンのカップが見えとるぞ。果物についてくるネットもある。ビニールの中身はほとんどがお菓子のカップと袋で大きく膨れ上がっていた。キミも貯めちゃって、嫌になって、ええいっとまとめて出しちゃおうと思ったのだな。しかぁし。缶と瓶とペットボトルなのだよ。今日は。
「でも・・今日は缶とか・・・そういう・・」
すると彼は自分の置いたビニールから、ホームパイのお得用の袋を取り出し、裏返し、私に見せた。
「ほらね。プラスチックって書いてあるでしょ。いいのよ、これで。わかった?」
「あ・・・」
そうなのだ。プラスチックというのは硬いものを想像していたが、石油からできているというくくりで、これらもそこに入るのだった。なかなかそこまで徹底している人はいないが、厳密に分けると、そうだ。知っていたのに、まぁいいかと、私が出していた普通ゴミには資源ゴミに分類されるべきものがたくさんあるのだ。
彼はその、徹底している最もきちんとした人なのであった。
思い込みというのは本当に恐ろしい。
「ごめんねぇ。ごめんなさい。」
恥ずかしいのと、きまり悪いのと。なんどもごめんねを繰り返すしかない。
「いやぁね。こっちも貯めに貯めたからね。資源っぽく見えないけど。いい?大丈夫?」
「はい、ごめんなさい。すみません」
ヨレヨレの毛玉のついたジャージにこれまた首の伸びきったグレーの半袖Tシャツの太ったボサボサ頭の彼は、若干得意げにスタスタ去っていった。
家に帰って普通ゴミの中から昨晩食べたポンセンの小袋を取り出し裏をみる。
ま、こんな駄菓子には・・・・・・あった。資源ゴミのマーク。これはプラスチックですと丁寧に小さく印字もされている。
あぁ。これまで私は普通ゴミすらきちんと出せていなかったのか。
もう一つ、室内用にゴミ箱を買うべきか。
・・・そこまでちゃんと、できるだろうか。
しかし、それにしても今朝は恥ずかしかった・・・。