お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

えらいなぁ

そして妻はまた、性懲りも無く夫の会社の上司にお年賀を買いに行く。

そう。あの文鎮・・・もとい、虎屋の羊羹。

夏の帰省の際、持って帰ったものの渡しそびれ、ずっと夫の机の下に置かれていた。不要になったならこっちで食べるから次のとき持って帰って来てくれと言ったが、二度、忘れられ、9月下旬になって舞い戻って来たという曰く付きのあの品をまた、買いに行く。

夫は息子の年金払い込みの手続きに、私はお年賀と分担した。

「年金、一年分まとめて振り込もうと思うんだけど、お金、あるかね」

いきなり10万あるかと言われたら、あるわけがない。

「なんなら、カード貸してくれたら降ろしてやっとくけど」

い。カード渡すのか・・・。別になにも不都合はないっちゃないが、なんか抵抗あるな。

いや、なんでもかんでも口座引き落としで教材やらなにやら、黙って買ってしまう夫に残高を見てもらういいチャンスかもしれない。

いつも知らないうちにお金が引き落とされているこっちの身にもなっていだだきたい。

カードを渡し、暗証番号を確認しあい、それぞれ出かけた。

新年早々のデパートは華やいでごった返し、活気にあふれているが、やはり疲れる。目当ての物を買い、ついでに白菜、もやし、きのこが新春セールでやすくなっていたので欲張ってそれも買う。

羊羹二本に部署の人達用の30個入りの焼き菓子、それに白菜だのと抱え、バスに乗り込んだときにはクラクラしていた。

あいつめ。これで今度渡さなかったら・・・。

家に戻ると夫は先に帰っていた。

「おかえり。おつかれさん」

「持ってみて。」

「あぁ・・重いねぇ、大変だったでしょう。お疲れさん」

「今度渡さなかったら、お買い上げいただきます」

「渡す渡す」

恩着せがましくふんぞりかえっていると夫がこう言いだした。

「なんかさ、このカード、違うみたい。同じ銀行だけど口座が違うみたい」

え?

よくみるとそれは高校時代の学費を払い込むために開設した口座のカードだった。もう使わなくなったから一度残高を確認しようと思って財布にいれていたのだ。間違えてそっちを渡してしまった。

「ごめんごめん、こっちだ」

「いいよ、じゃ、ちょっとまた行ってくるね」

怒るでもつっこむでもなく、機嫌良くまたジャケットを羽織り始めた。

いい人だ。

そういえばこの人が嫌みやからかいを言ったことはない。

私は・・・たった今、やったばかりです。