お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

寝てません

寝不足である。・・・御多分に洩れず。

こうして、大きなサッカーの日本代表の試合を見た翌朝

「寝不足である・・」なんて、言ってる自分にちょっとうっとりする。

普段の私は10時には自分にはベッドに潜る。5時起床のことが多いので、脳ミソが働かなくなりはじめ、機能しなくなる。息子が中学くらいまでは、さすがに遅くまで勉強しているのに、母親が先に寝るのは申し訳ないと、気合いで起きていたが、高校くらいになった頃から割り切った。翌日、もたないのだ。

「先寝るね」

「おう」

「頑張ってね」

「おう」

「お父さん帰って来たら、お盆にご飯、あるから」

「おう」

紅白歌合戦があろうが、オリンピックだろうが、体力の無さと睡魔には勝てず、いつも家族の中の誰よりも早く寝る。

 

夫が赴任中でいないので、息子は私にサッカー観戦仲間になることを求める。

一度は付き合った。勝った。二度目は深夜だったので寝た。負けた。そして昨日。

「今日は見るだろ。さすがに。決勝進出かかってんだから。」

素人の私でも、昨夜の試合がどう言う意味合いのものかはわかっていたので、覚悟はしていた。

「見るよ。どうも私は勝利の女神のようだからな。しょうがない、居てやろう」

ところが、始まったのがすでに11時。夕食後、仮眠をして来たものの、それがかえって良くなかったのか、前半、15分あたりですでに眠い。

私の関心事は、勝敗でもなんでもない、ただ、残り、あと何分か、それだけだ。

睡魔と戦いながら、意識は遠のく。しかし、そばにいる息子に眠っていると悟られてはまずい。

「よしっ」

大きな声ではっと目を覚ます。

川島選手がゴールを守った・・らしい。画面にはリプレイが流れていた。

「おお。すごい、ギリギリで掻き出してるよねぇ」

さも、見ていたかのようなコメントを口にしてごまかす。

子供が嘘をついたとき多弁になるのと一緒で、私は寝ていたことをごまかそうと必死で喋る。

「この解説してる人、誰だろね、聞いたことない声」

「さぁ、知らね」

息子は試合に夢中で母のうたた寝などには気がいっていないようだ。

また、睡魔との戦いが始まる。

「・・・ね、・・かな・・だろ」

・・・・・。・・・・?

話しかけられている!寝ていた!

「あ、あたし、この人、知ってる!見たことある!」

「え?」

「この人、知ってる人だった!見たことある!」

「・・え?当たり前でしょ。監督だから。何を今更・・」

しまった・・・。

「・・・寝てた?」

「寝てない・・・」

「嘘つけ、寝てたろう〜」

「起きてた」

「ヨイヨイ。そこで寝ろ、勝ったら起こしてやるから」

「寝てないって。ちゃんと起きてた」

後半戦が始まった。

そして、ここから、全く記憶にない。気がつくと、グランドに長谷部選手の姿があり、日本は負けていて、残り数分をパス回しで時間消化しようとしのいでいるという、ただならぬ緊張感の中にいた。

点数は負けているが、裏でやっている試合の勝敗によって決勝進出が決まると実況している。

ずっと寝ていたくせに、急にハラハラし始め

「裏の試合結果はいつわかるの」

と、これまたずっと真剣に見入っていたかのように息子に聞いた。

「もうじきだよ、一緒の時間に始めたから」

そこに、決勝進出決定と、流れた。

「よしっ」

「よかったよかった」

終わった。終わった。

これで眠れる。

私の長い長い闘いも、ここでようやく、終わった。やり遂げた。

しかし、よくよく考えてみれば、日本が失点したときも、長谷部選手や乾選手が登場したときも身動きもせず、じっと黙っていたのだから、バレていないはずはない。

親に自分の嘘が見透かされていたと知った子供のように、昨夜の小芝居が、今頃になって急に恥ずかしくなる母なのであった。