発熱
息子が熱を出した。
新しい環境での緊張と、連日の帰りが11時過ぎなことと、休みの日はアルバイトで4時起きと詰め込んだ毎日の疲れが出てきたのだろう。連休で少し気が緩んだのかもしれない。
ここで熱を出してくれて、どこかホッとする。
あんまり気を張っているのを見ていていつか張り詰めたものがプツッとなるのではと内心ハラハラしていた。
しかし、大学生なのだから寝かせておけばいいのに、ベッドに寝込む様子を見るとつい、意識のほとんどがそこに持っていかれる。
寝ているかうなされているか、寝顔から伺う。汗は、熱は。
何を食べるのか。食べられるのか。何を食べたいのか。
ベタベタと側に行くのも如何なものかと寝ている頃を見計らって除きに行く。
結局私のしてやれることはもう、お腹に入れさせるもののことばかり。
「何食べたい?」
「うーん、果物」
スーパーでりんご、バナナにポカリスウェットをカゴに入れる。
それから。
アイスクリームのところでまた迷う。かかりつけの内科の先生の教えで、食欲のないときは脂肪分の多いアイスクリームを食べる。こってりとしたものが受け付けなかったら、さっぱりしたものなら食べるのか。
ええい、とレディーボーデンとピノに果実の実を入れる。そもそもアイスを食べたいかどうかもわからないが、アイスは消費期限はない。買っておこう。
夜はどうだろう。
意外とケロッと「肉が食いたい」と言うこともある。全く食べないでひたすら寝続けるパターンもある。食欲ないと言いつつ、うどん程度は平らげることもある。今日はうどんの気がして、鱈の切り身をまたカゴに入れた。
昼過ぎにレディーボーデンとバナナを食べ、ポカリスウェットで薬を飲んでまた寝た。
「月曜にレポート提出なんだ、治るかな」
「明日の夕方には書けるんじゃないの」
「土曜日、どうしても休めない授業なんだ。治るかな」
治る治る。今日と明日寝てれば、治るよ。
全く心配していない、どんと構えているかのように、「動じていない母」を装い答える。
お腹に入れるものと、大丈夫大丈夫と言うこと。
それだけだ。私がしてやれること。
やはりうどんを食べると言う息子。
少し得意な気持ちで鱈と白菜と豆腐を入れたうどんを作る。
近頃友達みたいな同居人の息子に「はい、どうぞ。」
久しぶりに今日はお母さん。