お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

バターの香りと溝掃除と吹き抜ける風

今日はなにもしないぞと決めて1日を過ごす。

夕飯もあり合わせにしよう。なにもしないことが、今日の予定。

そうやってみると、如何にいつも無意識のうちに段取りのことばかり考えていたかわかる。たいした家事をしていないのに、その合間になんとか自分個人の時間を作ろうとするから常に時間に追われて焦っているのだ。ご飯の時間、掃除をして、昼ごはんはなんにしよう、野菜とタンパク質は足りているか、買い足しておかないとならないものはなかったか、夕飯は・・・。私の疲れは肉体的疲労よりも、どちらかといえば「無駄なことを考える」ことからくる頭の疲労。

インターネットで見かけた、ホットケーキミックスでメロンパンというのをやってみた。

ミックス200g、バター40g、卵一個。これを混ぜて、丸くまとめて6等分し、ナイフでメロンの模様にマス目をつけてグラニュー糖をふりかけたら、オーブンで180度15分。

階段をつたって二階までバターと卵の甘い香りが広がる。

それを嗅ぎつけた息子が降りてくる。二人で食べた。

焼きたては確かにメロンパン風だった。柔らかいスコーンのようなものができた。

「メロンパンかといえばうーむというところだけど、これはこれでうまいよ」

「甘すぎなくていいわ。これ、好き。また作ろう」

息子は3つ、私は1つ、そのあとイチゴを洗って食べた。

「では夕食は6時半ということで」

それぞれ、自分の時間に戻っていく。

なにもしなくていいとなると、じゃぁ、前々から気になっていた門のところの溝を掃除しようかと思いたつ。

ビニール手袋とゴミ袋、ラジオを持って庭に出た。

時間はたっぷりある。手際よくやる必要がないのだから楽しい。

鉄の柵を外し、泥と枯れ葉を掻き出す。陽気なラジオ。じりじりと日差し。

ミミズが掘り出した泥の中から突然の襲来に驚いて慌てて捩れながら現れた。

「ごめんごめん」

ひょいとつまんで、郵便受けの下の土に放り投げた。

泥とラジオと日差しとミミズ。そしてそこに風。

顔を撫でていく。いい気持ち。

暮らすってこういうことだ。

追われず、気負わず、小さな一瞬の幸福感がその合間に顔を出し、感じとる。

ドトールに行って本を広げて自分の世界に没頭しなくても、そこにある。

不意にやってくる風をキャッチするように、焦って確保しようとしなくてもそれはやってくるのだった。

焦らない。求めない。

暮らしを暮らす。