未熟を恥じる
夫が一旦、赴任先に戻った。明日、明後日、明々後日と出勤し、またこちらに4日の朝戻ってくる。
昨夜、今朝と私は機嫌が悪かった。
正確に言うと、いつもは流せることがいちいち気にさわる。それが自分の神経が尖っているせいだとわかっているから、黙ってはいるが、器が小さいので、顔つきと会話のノリの悪さに表れる・・・。一番はた迷惑な。
疲れていたのだ。
心も体も。
身体が疲れているから心も引っ張られて弱ったのか。
何をしたわけでもない。母と丸一日、祖母のところに行き食事とお茶とおしゃべりをしたこと。普通の主婦がこの時期にやるような庭仕事と季節の準備。ちょっと頑張っただけだ。ただ自分が虚弱だということを計算に入れず、余力を残さなかったのがいけなかった。
その結果、一番気を抜ける夫が被害被った。
夫は例によって何の反応もせず、ヘラヘラとしていた。それがまた腹立たしい。
「それじゃ、行くね」
結局私は笑顔になれないまま、玄関に立ち、その場で手だけ降って見送った。
せっかく遠くから帰って来たというのに。
わかっているのに、どうにもできなかったのは単に甘えだ。
私が自分の感受性も守れない馬鹿者のまま、夫は帰ってしまった。
昼前、夫からいつものように車中からラインが届く。
富士山の写真と「今、浜名湖通過中」。
「浜名湖ですか。滞在中、激疲れのために笑顔が出なくて申し訳なかった。4日までに何とか調整して元気になっておくね、気をつけて」
もう少し言いようもあろうかと思ったが、「ごめんね、せっかく帰ってきてたのに。」なんて可愛いことは、たかが、ボタンを押すだけでも言えない。
「トンさんはそのままでいいんだよ」
そうか疲れてたんだねでも、大丈夫?でも、ゆっくり休めなどでなく「そのまんまでいいんだよ」。
かなわない。
ふくれっ面も仏頂面もそのまんまでいいと言ってしまえるその大きさ。
洗面所のかーっぺっ!もご飯食べてるときのくちゃくちゃさせる音も、寝ているときにするオナラも、このおおらかさの前に消えてしまう。
かなわないよなぁ。