お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

じゃれ合う二人

夫がワインを買って帰ってきた。

ただいまと一緒にスーパーの袋の音がカシャカシャいった。

「ワイン買ってきちゃった」

「昨日も飲み会だったから平日は飲まないんじゃなかったけ」

「そうなんだけど、飲もうと思って。あ、トンさんと息子のビールとアイス、買ったから。ほら、これ、トンさんのアイス、好きな奴」

「あら、そうそう、これ、好き」

目先のアイスについ。

「騙されんな、そうやって話題逸らしてるだけだそ」

息子がするどく話をもとにもどす。

「飲まねえっていったら飲まねえんだよ、アイスなんかでごまかすな」

ヒーン、と照れ笑いをしながら「トンさん、アイス、ここに入れたから、買ってきたから」と冷凍庫にしまう。

「恩着せがましいんだよ」

息子はいちいち手厳しい。

まあ、絶対ダメといっても飲む気分で帰ってきたんでしょう。それをパチンと消されたらシュルルルルと気持ちが沈むでしょうよ。

隠れて飲まれるよりはいいよなあなどと思って黙っていると

「あれ、トンさん、なんか、顔色が」

夫が私を覗き込んだ。

「え?なに?顔色がどうした?」

「なんか疲れた顔してる、大丈夫?」

「え?そう?そういえば少し疲れてるけど・・・」

やっぱり夫にはすぐ私の不調がわかるのかしら。

「違うぞ、これ。そう言ってワインから話し、そらそうとしているだけだぞ。騙されんな、母さん」

息子がまたしても切り込んだ。

「そうか!ヤバイヤバイ、やられるとこだった!そうか、この優しさはまやかしか!怖い怖い、すっかりホロリとくるとこだった!」

「ひーん、違うもん、本当につかれてそうだなぁって思ったんだもん」

ヒーンヒーンと苦笑いの夫に、ふざけんじゃねえっと勝ち誇る息子。

仲良しなのねぇ。