ヤンチャ姫
母が青森から帰ってきた。
そう。このお嬢様、お元気。私との京都旅行から帰宅後、一回、吹き矢の教室、二回の体操教室をこなし、日曜から二泊三日、吹き矢の仲間と青森に旅してきたのだった。
こちとら旅の疲れから寝込まないよう、細心の注意を払い日常をこなしているというのに、元気だ。
お土産にゆべしと青森県産のニンニクと帆立の乾燥したのを持ってきた。ニンニクは自分にもたくさん買ったというが、そのパワーをさらに磨き上げるつもりのようだ。恐ろしい。
恐ろしいといえば、乙女は最近、話すことがかぶる。相槌を打ちながら、うーん、これは昨日と同じネタだ・・・と思いつつ、ヘラヘラ笑っているが、これはどうなんだろう。あれか、軽度認知症の入り口の表れの一つか、それとも、あちこち誰にも彼にも話しているうちに、どこに話したかわからなくなり混乱しているだけなのか。
試しに昨日やり取りをした時と同じ台詞をもう一度、全く同じ言葉で返してみる。まるっきり同じやり取りをすることで、「あ、これ、昨日もこのやり取り、この人としたっけ」と思い出すかもしれない。
しかし、反応はまるっきりで、あれ?とも感じないようで、昨日と同じく嬉しそうに一気にまくし立てている。
う〜ん。
話の内容は重大なことではない。姉には聞いてもらえない、ゴシップ的な世間話なので問題はないのだが、ちょいちょいその頻度が増している。
この人はあれか。あまり深く考えずに、湧き出てきた衝動で話しているのか。
話しながら、あれ、これ、この人に話したっけと思いつつも、ま、いっかと喋り続けているのかもしれない。
昨日と同じところで驚き、同じところで憤慨し、最後の落とし所で「全くねぇ」とゲラゲラ笑いながら、この人が本当に認知症になったとしても結構こういうのは苦にならない自分を見つけて、大丈夫そうだ、受け入れられると頭の反対側でホッとしている。
母の老後をいよいよ迎えるまでに、母とのわだかまりがなくなったのは滑り込みセーフだった。
今、このヤンチャばあちゃんが可愛くてたまらない。
わけわかんない困った腕白嬢ちゃん、かつ、私と姉を不器用な力で愛して守る。
トンチンカンであればあるほど、愛おしい。