お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

冬支度の一人運動会

昨日、雨だったので一日、家にいた。

明日から立冬だというので家中の寝具を冬使用にすることにした。

三人分の布団カバーとシーツをひっぺがし、枕カバーを外す。とたん、男どもの匂いがぷーんとする。

あぁ私は、夫息子のいる家庭の主婦なんだと、そのとき思う。

羽毛布団のカバーはいつもうまくいかない。布団とカバーを結びつける輪っかに紐を結びつけ、さあっと持ち上げると必ず、どこかひきつっているのだ。

今回も三つやって三つともやり直した。

合計6回。意味なく消耗。

消耗してくるとなかばヤケクソで、どうせならマットレスの向きも変えようと思い立つ。なにが「どうせなら」なのかよくわからないが、変なスイッチが入ってしまった。

マットレスを持ち上げて、側面を下にして上下を回転させる。そして裏表を逆にバタンと倒す。

腰と腕と太ももの裏がよろよろするのを、持ちこたえ、途中、マットレスを抱え込みながら放心状態になり、途方に暮れる。

が、もう引き戻れない。床にはひっぺがした夏カバーの山があるのだ。

シーツと枕カバーを付け替え、重い生地のベッドカバーをえいっと宙に広げ、おろす。

ゼーハーゼーハしながらなんとか三つやり終えた。 

外は雨。風呂場には室内干しした洗濯物がずらり。埃っぽい身体を、お風呂を湧かして洗いたいが、あれらをどかして二階に持って行く余力は既にない。

外は雨。時刻はすでに4時。昼ご飯を食べていない。夕飯も作っていない。

外は雨。

あの床に積み上げられた男の匂いぷんぷんのシーツたち。

なにからなにをどうしたらいいのか。

とにかく、食べよう。

いや、とりあえず、あの山を洗濯機にしかけて、それからだ。

上に行ったり下に行ったり。二回に分けて洗濯機をまわす。

食べよう。朦朧とする。

お砂糖がたっぷりのったデニッシュとコーヒー。

甘さがじんわりと、脳に直接働きかけひろがっていく。

疲れた。

でもこの心地よい疲労感。やり遂げた。気になっていたこと、全部、やった。これで、今夜からぬくぬくあたたかい。

息子も喜ぶぞ。

枕元にプレゼントをしかけたクリスマスの夜のような、ホクホクした気持ちがこみ上げる。喜ぶぞぉ。

「きょう、寝るとき温かいよ。布団も枕もカバーもふっかふかだよ」

「ふーん」

わーい、といそいそと、いつもより早めにお布団にもぐりこみに行くような、可愛らしい年齢はとうに過ぎ去った青年は、あ、そう、くらいの薄い反応しか示さない。

いつものように夜更かしする息子を残し、私はいそいそと、いつもより早く、ベッドに潜り込む。

あぁぁぁ。・・・・幸せ。

 

そして今朝。

これまたいつものように遅く起き、カレーを温め直し食べる息子のベッドを見に行くと、見るも無惨にシーツはよれ、布団は足下に丸まり、枕カバーは新しく男の匂いがくっついている。

男子のいる家庭ってこんなもんだと、枕カバーをひっぺがす。