お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

いい匂い

息子のシーツを洗う。

昨日から決めていた。昨日、出かけるまえ、洗濯物をしまいに行ったら、夜中の台風で締め切った19歳男子の部屋は、汗なのか皮脂なのか、なんなんなのか、正体不明の臭いが部屋に充満していた。

ベッドの上に丸まった羽毛布団を広げて大きく振り上げると、動いた空気に乗ってもろにかかってきた。湿っているわけではないのに、綿の布団カバーは張りをなくし、トロンとしている。そのよれっとした繊維一本一本が、じっとりと青年臭を吸い込んでいるようだ。

これだ。元凶は。明日、洗おう。洗わねば。

あれはなんなのだろう。

一瞬、うっとはくるのだが、慣れてくると、それはそれで馴染み深い家族の体温も思い起こさせる。受け付けないというほどのものでもない。おへそのゴマを掃除すると、ふわっと上がってくる、あの変な。

好きじゃないんだけど、なんか自分の一部のような。あれと似ている。

それでも、やはり自分のヘソのように愛着は抱けない。

ムンっは枕カバーからもする。

いつもはこの辺で若干めげる。どうせ洗濯しても、完全消去はできないのだ。

さあ、どれどれ、と思って洗い上がったシーツと枕カバーに顔を埋めてみると、手強く残り香がそこにいる。どかしてもどかしてもいるのだ。連日洗おうが何しようが、どっかりと住み着いている。

あぁもう、これは太刀打ちできない。これが限界か。

根性のない私はそこでいつも諦める。

昨日ズーパーで消臭ビーズなる強い味方を買ってきた。

連続7日間は消臭効果が続く。

嫌な枕の匂いも撃退。

洗剤一つ入れたらスイッチオンの私は、柔軟剤も使う頻度は少ない。

以前、柔軟剤のいい匂いでこの強い臭いを消すことができるかと入れてみたが、枕カバーの住人となってしまっている奴らは踏ん張り、そこにフローラルの素敵な香りがのっかって、あまり良い結果ではなかったのだ。

が、しかし。今目の前にあるこれは、臭いに、それも枕にピンポイントを当てて開発された新製品なのだ。

迷わず買った。

洗い上がったシーツたちを洗濯機から取り出し、ベランダに広げたその瞬間、すぐわかった。

勝った・・・。すっかり、消えている。余韻も気配もない。

風に乗って入ってくる洗濯物の香り。これだ。これこそ、窓から入ってくる洗ったシーツの香りだ。なんて爽やかなんだろう。

寝室の床にあるフロアクッションに腰を降ろし、だらんとその後ろのベッドに体を預ける。

空が見える。

目を閉じる。

風が吹く。顔を撫でる。そして、後からくるシーツの匂い。

いい匂いだぁ。

これは使える。

男子チームのもの全般にいける。

ムフフフ。

家事の諦め憂鬱枠、一つ、クリア。