お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

引けつける人

あれから修理屋さんに電話をした。

壊したMacBook Air

OSのインストールを失敗し、初期化したら、消してはいけないディスクを消去してしまい、どうしようもない事態になってしまった。以前、MacBook Proを修理してもらったところに持っていこうと思いつつ、前回同様の修理代だとすると3万円。それはちょっと痛いなぁと、ブツブツ言っていたのだが。

それでも、そのまま放ったらかしも心が痛む。とりあえず電話だけして、どのくらい費用がかかるか聞いてみようと思ったのだ。

外苑前から徒歩5分のこのお店は、ビルの5階にひっそりとある。ドアをあけると、あちこちから届けられたパソコンの入った宅急便の箱が積まれている。近所にも修理してくれるところがあるのに、電車に乗って20分のここに迷わず電話をしたのには訳がある。

人がいいのだ。

ギラギラしていないというか。

前回のとき、ドライブと一緒にメモリを増やして最新のOSにしてほしいとお願いすると、そうやって動かないことはないが、この機種には負担がかかり、半年くらいすると動作が遅くなる。今は必要最低限の修理にしておいたほうが故障は少ないと教えてくれた。

言われたとおり「じゃぁそうしてください」と言ったが、よくよく考えてみたら、ちょっとずる賢い人だったら黙って言われた通りに最新OSを入れておけば修理代も高くとれる。半年後に不具合が起きたとしても、そのときには、修理後の一ヶ月保証期間も過ぎている。うまくいけば、自分のところにもう一度やってくるかもしれないじゃないか。

5万円近くとれるところ、3万円コースを勧めてくれたのだ。

修理が終わると、予定時間より早かったと電話をしてきてくれた。

「まだこの近辺にいらっしゃったらと思いまして」

パソコンを受け取り、帰りぎわ、雨が降ってくると、奥からビニールパッキングを持ってきてくれて、梱包しなおしてくれた。

そして、極め付けはこれだった。家に帰ってパソコンを開けてみると、キーボードのAのところがとりかえられている。

ずっと長いこと使い続けているうちにAのキーだけ、印字してある白いインクが滲み、なんのキーだか判別できなくなっていた。それでも、位置からこれだなと判るのでまぁいいやと、そのままにしていた。

それが、美しいAの文字が。修理のついでに新しいものに取り替えてくれたんだ。

そんなことなんにも言ってなかったのに。

お兄さんとおじさんの間くらいのあの人。いい人なんだなぁ。

心がホクホクした。

電話をして状況を話す。

節電モードで立ち上がると言うと、それならそう深刻ではないかもしれないですね。と心強いお返事。

「うまくいけば、8000円くらいでいけると思いますよ」

それなら、あの商品券で直せる。

「あの、今から持って行っていいですか?」

「あ、はいぃ。構いませんよ、お待ちしております」

早速担いで持っていくと、相変わらず日本中から届いているデスクトップやノートブックの入った宅配便の箱が山積みになっていた。

きっとこの人たちの中には、私のようにこの修理屋さんの人柄に惚れ、頼むならここと決めている人がいるのだろうな。