反省してるのに嬉しいのだ
古着屋で500円のセーターと1900円のセータを買った。
買ってしまった。
定期に手を付けた直後だというのに。
無駄遣いを激しくした覚えはないが、節約もしていなかった。いつものように読みたい本を買い、ちょっとおいしそうなお菓子をみつければ買い、食後のアイスも買っていた。
言い訳がましいが、私は洋服や化粧品や美容院にはあまりお金を使わない。女性として大事なところをケチるくせに、パソコンの修理だの本屋で出会ってしまった新刊本だのと、そっちへの欲望に弱い。
今年の夏は三人で旅行に行った。息子と夫の二人旅もあった。夫の社員旅行、会社へのお土産、息子の夏服。私の治療費。そうだ、プリンターが壊れて急遽新しいのを買った。テレビも壊れて買った。予定外の出費はたくさんあったのに、まったくいつも通りに呑気な家計管理をしていたのだからこうなるのは当たり前のことだ。
がっくりしつつ、解約手続きをする。
20万円だけ、生活費補助として、口座に移し、残りは未練たらしくもう一度新たに定期預金にした。
単身赴任で二重生活なのだから、ただてさえ引き締めないと。よし、ボーナスまで年内、これで乗りきるのだ。
夫に言えばなんとかしてくれるのかもしれない。
が、言えない。先月夫に息子の後期学費の払い込みを頼んだばかりだ。ここはなんとかこっちで持ち堪えて乗り切らねば。
お金が足りないというのは、いいづらい。
毎日一緒にいるなか、さらっと相談するのもタイミングが難しいが、一人暮らしをしている相手に「お金・・・」というのは、なかなかいえないものだ。
とぼとぼ反省しながら歩いていたら古着屋を見つけた。
吸い寄せられるように店内に足を踏み入れる。
ユナイテッドアローズの薄い水色ウールのハイネックが未使用で500円。ヒロコ・ビスの未使用のグラデーションブルーで袖口に二重のちいさなフリルがついた、余所行きになりそうなのが1900円。
手に取っては棚に戻し、手に取ってはまた戻し。
店内の商品整理をしている男性定員にチロチロ見られるほど、長いこと繰り返す。
たった今、気を引き締めると誓ったばかりではないか。夫が新幹線代を節約して深夜バスで帰ってきているというのに。ダメだろ。ダメだよ。
・・・迷いに迷って、買ってしまった。
買ってしまった。買ってしまった。
反省しなくてはならぬのに、ホクホクしてしまう。
あのセーターならジーパンでも、デパートくらいはいける。
あのハイネックは500円だから今年の秋冬は惜しげなくスーパーでもどこでも着ていこう。
迎える寒い季節が楽しくなってくる。
似合ってたな。我ながら。
ホクホクホクホク。
明日から、がんばろう。