壊したのは私
MacBook Airを壊してしまった。
前回はMacBook Pro。あれは仕方なかった。老朽化が原因だったのだから。ある日、起動したら黒い画面にくるくるとスターがまわり、そこからうんともすんとも言わない。前日まで問題なく動いていたのに。アップルに相談したら、もう年式が古すぎて備品がないから、あきらめてくれという返事だった。
結局ネットで探しまわって良心的なマック専門の修理屋に持ち込み、3万かけて直してもらうことができたのだが、この3万円は賢い消費だったと自画自賛している。
家族は新しいのを買えばといってくれたが、そうなると20万円近くはいく。それを、自らの執念で3万円に押さえたわけだ。
「新しいの買うのをやめて修理ですませたから、修理代に3万円使ったよ」
夫への報告も鼻の穴をフガフガとさせて得意げにした。
しかし。
今回は、壊した。100パーセント自己責任である。
アップデートのお知らせがあったので、OSをバージョンアップしたが、どうも相性が悪かったようで、それ以来起動が遅い。おそらく、古いパソコンには頭の良すぎるシステムは対応しきれないのだろう。
そうかそうか、君にはこのシステムは難しすぎたのねと、一旦工場出荷状態にもどし、もとのバージョンのものを再インストールする。
ここでやってしまった。
初期化の際、システムのはいったハードディスクを消去したつもりが、どうも、根本的に消してはいけないディスクを消してしまったようなのだ。
再インストールをしますか?
はい。
こちらの規約に同意しますか?
はい。
インストールするディスクを選んでください。
・・・・・・。
表示されず。いつまでたってもなにも表示されず。
そう。おそらく、この、インストールすべき箱ごと、消してしまったたらしい。
おやおややってしまったと、当初、事を軽く見ていたわたしは、タイムカプセルを使って、以前の状態に復元しようと試みた。
が、箱自体がないのだ、カプセルも復元のしようがない。
復元先のディスクを選んでください。
・・・・・・・・。表示されず。
なんということだ。どうしようもないことをしでかしてしまったと、気がついたのはようやく、このときになってからだった。
たぶんこの前の修理屋さんに持って行けば直してくれるとは思うが、また3万円近くはかかるだろう。
今、3万の出費はつらい。
これからお歳暮、クリスマス、正月と特別枠の出費が重なるというのに。先日、息子の秋服とデニムを買って引き締めようとしていたところだというのに。あぁ、雑な性格が災いした。もっとちゃんと、用心深くやるべきだった。
こそこそと一階のMacBook Proで例の修理屋さんのホームページをのぞいていると休みで家にいた息子にみつかった。
「なに、また壊れたの?」
「今度はAirちゃんが。壊れた」
自分で壊しておきながら、つい、壊れたと言う。
「ふーん、もうじき新型出るらしいよ」
「そんなの買えないよ、今度もきっと直る」
「母ちゃんはえらいなぁ」
やめてくれぇ。母はそんなに立派な人ではない。壊したくせに壊れたと言う、セコい奴なんだよぉ。
ボーナスいくらでるかなぁ。
あのとっておいた、一万円の商品券、使ってしまおうか。
しかし、どうひねってもひねっても3万円は湧き出てこない。
とりあえず、一階のMacBook Proを二階の寝室に運び、壊したほうを一階に置きかえる。
ごめん。君を見捨てたわけじゃない。きっと必ず、助けるからっ。
ごめんよぉぉ。Air!!