チャット
Kindleのタブレットの接続がうまくいかないので、困っていた。
買ったときから、接続しても、反応したりしなかったり。どうも、角度によって通電したり、できなくなったりするようだった。
ケーブルの根元の角度をクイっと押すと、ピョンと音がして充電をはじめる。
よくよく考えれば届いたときからそうしないとできないこと自体、おかしなことだった。しかし、無精でいいかげんな性格が「ま、充電できないわけじゃないし、いいか」とこれを放置した。
ずっと、角度に気をつけながら充電していたが、先月あたりから反応も悪くなり、クイっとするところをクイクイクイっと何度か探りながら、ジャックを入れ直したりしながらの、さらなるテクニックが必要になる状態になっていた。
それが昨夜、バッテリー残量23パーセントを最後になにをやっても充電できなくなり、それでも、ま、明日もう一度やればと甘くみて、ベッドに持ち込んで音楽を流しながら眠ってしまったことで、ついに最悪の事態を迎えてしまった。
バッテリーゼロ、しかも充電できず。
本体には問題ないのに使えない。
カスタマーセンターに相談しようといろいろ調べると、なんと先月末までは保証期間だということがわかった。
買ってすぐに電話すれば、さっさと新しいものを送ってくれるシステムだったのに。やってしまった。
それでも、修理代はいくらくらいか知りたくて、センターのホームページにいってみた。今すぐ相談に乗ってほしい人は、電話かチャットか選べとある。
いつもは、手っ取り早いので電話にするが、保証期間もすぎている間抜けさが、直に話すのはどうも気恥ずかしくて、チャットを選んだ。
チャットは初めてだ。
ドキドキするが、何事も経験だ。やるべし。
担当者が画面上に、文字で話しかけてくる。
自分の困っていることを、こちらも文字で打ち込む。電話と違って、入力する方法は客観的に、遠慮もなく、自分の状況を相手に伝えることができる。
「その症状はいつからですか?」
「実は買った当初からだったのですが、工夫すればできたので、そのまま使ってしまいました。先週あたりからいよいよおかしくなり、今日ついになにをやっても駄目になってしまいました」
「本来なら保証期間がすぎているのでこちらでの対応はここまでとなりますが」
なりますが?え・・・その先は・・。
じっと待っていると、あちらもじっと打ってこない。それでもじっと待つ。
「ですが、ほぼ一年での不具合であり、お買い上げ当初からの症状ということですので、今回に限り、代金全額を金券でお贈りするというのではいかがでしょうか」
いかがもなにも。大喜びだ。こんな展開になるなんて。よかった、修理代を知りたいなどと打ち込まないで。電話ならつい、そう聞いていたことだろう。
「ありがとうございます。もう一度新しいタブレットを買わせていただきます」
お世辞でもなんでもなく、本当にそうしようと思ったので思わず、浮かれて打ち込んだ。
「ありがとうございます。ちなみに来月には新バージョンの発売になりますので」
「では、それを待って」
「是非」
「あの、クレームではなく参考までに質問です。値段のたかい商品の方がこういうトラブルは少ないのでしょうか」
しばらく止まった。待つ。
「トップモデルは音響や画面の大きさなどが違いますが、基本的機能、端末はどれも同じですので影響はないかと、思われます」
長い長いやり取りの間に、じんわりと友情にちかい感情が芽生えていた。