友達
彼女が母のコートを返しにやってきた。
自分の分だけお弁当を持ってってそっちで食べていい?いいよ。
フォッカチャのサンドウィッチを二つにジュースのパックを持ってきて食べ始める。
「靴下、裏っかえさないの」
私が洗濯物を干しているのを食べながら眺めて、言う。
「うん。めんどくさいもん」
「履くときに自分で裏返させるの?」
「うん、いつものことだもん、そんなもんだと思ってるんじゃない?」
「それ、誰の?息子の?パンツは裏っかえさないと。その方が早く乾くし、色落ちもしないよ」
「あ、そっか、そうだね」
確かに、ポケットが外にある方が早く乾く。言われた通りに裏返す。
彼女の目は食べながらあちこち動く。
「エアコン、なんか蓋が空いてる、なんか出てるよ」
今度は椅子に乗ってエアコンのフィルターカバーをかぱっと開けて見てくれた。どうもフィルターの収まりが悪くてはみ出していたらしく、直してくれる。私は下から覗き込む。フィルターが埃だらけになっていたらまた怒られるなぁと覗くのだ。
あれ、なんでだろ。綺麗だ。あぁ、そうだ、ガスファンフィーターが故障したときに修理するまでのつなぎに使ったら、埃らけのキナ臭い風が出てきたんだった。息子に「臭い臭い」と文句を言われ、渋々寒い冬の日にゴシゴシ洗ったんだった。セーフ。
「よかったぁ。汚れてないかドキドキしちゃった。」
「ちゃんと掃除してあるね」
帰りがけ、階段においてあった、昨日アイロンをかけたものを畳んで入れたカゴ
に積んであるシャツの山を見て
「アイロンかけたのね。えらい」
褒めてくれる。
おかしくなって
「そうよ。エアコンのフィルターも掃除したのをちゃんと見せなくちゃと思ってわざと蓋を開けておいたのよ。わざわざ半開きにしてフィルターを出して目につくようにして。手が混んでるでしょう。よしよし。フィルターとアイロンと、二つちゃんとチェックしたから、今日のポイントクリアしたわね。帰ってよし」
と笑う。
「ふふふふふ。見ました。確認しました」
「旦那さんに言っておいて、トンちゃんったらアイロンかけてフィルターもピカピカだったって」
「言っとく言っとく」
友達っていい。