バカな母親だなぁと思いながら
息子が昨日、アルバイト先で褒められたと、帰ってくるなり話し始めた。
鉄道接客の仕事をしている。
休憩時間、事務所に向かう移動中、車両内でお客さんが気を失って倒れたので、緊急停止ボタンを押した。
担架を持ってきて、倒れた若いお嬢さんを医務室に運んだだけなのだが、帰りの申し送りの際、社員さんから名指しで褒めてもらったらしい。
キャスト全員の前だったので相当嬉しかったのだろう。
聞いている私も心が踊る。
人を助けたというほどのことではないが、息子が躊躇せず、すぐにボタンを押せたことが意外で、それが嬉しかった。
私だったらどうしただろう。助けよう、助けたいとは思うが、派手な音のなる非常ボタンを躊躇して、すぐには押さず、しばらく様子を見守ったかもしれない。
鉄道員の制服を着ていたら、違っただろうか。使命感でいつもの自分とは違う行動ができるような気もする。
倒れたお嬢さんはもともと体の弱い人のようで、友人達も慌てず、すぐに家族に連絡を入れたりと落ち着いていたそうだ。
「すぐ目を覚ましたから、午後にはまた遊びに行ったんじゃないかな」
食事中も、もう一度同じ話をする。よほど得意なのだ。
私も「すごいねぇ」「よく落ち着いてできたねぇ」とバカ親で褒めまくる。
「そいういうのが生きる力だと思うんだよ。対処する力っていうのか」
夫が会社での武勇伝を話すときは、1度目は「よかったね」と聞くが、何度も何度も同じ話を繰り返し始めると
「もうわかったよぉ」
というくせに。
こんなバカ母になるなんて。
と、思いながら何度も何度も「すごいねぇ」と言う。