お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

悪くないなぁ

昨夜は飲みすぎ食べすぎた。

友人と会って帰宅する途中、緊張が解けたのと冷えたのとでか、急にお腹が痛くなり駅のトイレ、デパートのトイレ、最寄駅に着いてから近所のスーパーのトイレへと駆け込み、必死の思いで家までたどり着いた。

冷え切った身体と脱水状態で朦朧とした頭でうずくまりたい。が、この後、第二ラウンドが待っている。

「おかえり、楽しんだか?」

息子に「うん」とだけ言いそのまま二階に上がる。

今夜、母からお祝いをするから食事を食べにいらっしゃいと招待を受けている。

「その日、お友達とご馳走食べてくるから、そんなに頑張ってくれなくていいよ」

「お姉さんがせっかくお休みをとってくれているんだから、来なさい。あなたのためっていうのじゃないわよ。孫ちゃんにもたまには大勢で食べることがもっとあった方がいいのよ。一人っ子なんだから。お姉さん、何かお祝い用意しているみたいだから、ちゃんとお礼を言いなさいよ」

シフト制で働いている姉がわざわざ妹の誕生日に合わせて休暇をとってくれた。お寿司をとって、うんちゃらかんちゃらとかいうお洒落なデリも買ってきてあるという。

寝よう。とりあえず、まだ時間はある。

スウェットに着替え、ホッとしたところでベッドに倒れこんだ。

「・・・か?おい。おーい。母さん」

息子が、夕食の準備できたってよと呼びに来た。

「大丈夫かよ」

大丈夫大丈夫。30分ほど横になったらだいぶ落ち着いた。

ヨロヨロしながら実家に向かいつつ、ぼんやり思う。

私冷えちゃって、お腹壊しちゃって、ごめん、悪いけど横になってくる。

・・・と、この状況でそう言わないのは、実の母と姉に対し私は心を開いてないってことになるのか、どうなのか。

いやいや、この歳になれば多かれ少なかられ、誰しもこんなもんだろう。

できることなら丸く収めたい。

がっかりさせたくない。不平不満を聞きたくない。

テーブルにはお寿司にデリにサラダにワイン、いちごがどーんと並んでいる。

う。・・・よし。食べるぞ。

「今日くらいいいじゃないの」

姉に勧められてワインを飲む。二杯目、断ると母が「せっかくお姉さんが・・」。

「あ、いるいるいるいるいる。ありがと。」

や、休まらない・・。ええい。飲んでまえ。

酔いがまわり食べ物がお腹に入ると身体も温まり、血流も良くなる。もうなんでもいい。

お腹がシクシクするのと姿勢良くしているのがしんどいのとで、肘をつき、行儀悪く、寿司をつつく。

今日のお寿司は定休日だったけれど私が電話をしたら特別に配達してくれたと母が自慢げに話している。

「進級できるの?成績ちゃんととってるの」

二人から突っ込まれている息子は、転科願いの件はおくびにも出さず「はははは。俺は優秀だからね」と流している。

姉がなんだか西洋美術史の小難しい話を振ってきた。

「さて、・・・ってなんていう意味が含まれているかかわかる?」

いつもこのミニテストみたいにして学力を試されるのが苦痛なのだ。「知らなーい」「これ、常識なんだけど」「知らないもーん」。

肘を母に注意されるが「いいじゃないの、誕生日くらいさぁ」と、ヘラヘラしているとなんだか本当に面白くなってきた。

 「ダメだ、酔っ払ってる」

姉が大げさにため息をついていた。

そうなんだよなぁ。結局自分が自分を縛ってさぁ、落ち度なくバカにされないように怒られないように褒めてもらえるようになんてさぁ。

もう、降参。降参です。どうだっていいんじゃなかろうか、こんなちっぽけなこと。

私は楽しく。私が、楽しく。

その後、まさかのあんみつが出てきて、その中の求肥を口の中で転がしながらテーブルのみんなの顔を順にみる。

家族かあ。

家族が祝ってくれてるのか。

49歳も悪くないなぁ。