オナラ
今朝、夜行バスで夫が帰ってきた。
いつも思うのだが、長い間会わないでいても、スルスルっと馴染む。違和感がない。
あんまり日常に溶け込んでいるので「久しぶりだから、サービスしてあげよう」という気もおきない。
「朝ごはん、納豆とお味噌汁でいい?」
扱いも雑になってしまう。
朝食後、夜通しバスに揺られて運ばれてきた、クリスマスケーキを早々と食べた。会社の付き合いで買わなくてはならなかったらしい。この週末にクリスマスパーティをする家庭が多いのでこの時期、配られたそうだ。
日持ちもしないし、午前中なら消費するだろうと、みんなでザクザク大きく切り分けて小さなホールのケーキを4分の1残して平らげた。
「これだけ食べたら、昼、軽めでいいね」
その後、銘々、何するでもなく、リビングで過ごす。夫は年賀状を書き、私は家事をして、息子は窓際の椅子に腰掛けて、スマホをいじる。
会話もない。
ブッ。
「あ、失礼」
夫がオナラをした。
「てめー、本当に失礼と思ってねえだろう」
息子がすかさず絡む。
「ごめんごめん。いいなぁ、家庭だなぁ」
オナラをしても、シーンとしている部屋から来た夫は、私がするする馴染んでいつもと変わらないと構えているよりずっと、帰って来たぁと噛み締めているようだった。