そばにいること
今日は完全にやられた。
5時半に息子を送り出してから暑くなる前に散歩にいくつもりだったのだが、
どうにもこうにも起き上がれず、正真正銘、寝っ転がったまま2時になってしまった。
きのう、呑気に過ごして申し訳ない気分になるなどと、偉そうなことを抜かしたとたん、
「ほほう。じゃあお前さんもすこしはしんどい思いをしたいのかい」
と神様にからかわれているようで恥ずかしい。
呑気も幸せもありがたいなぁと、素直に受け取っておけばよかった。
次からそうしよう。
昨日の夕方、母がやってきて、また階段の下から私を大きな声で呼ぶ。
リビングにいた息子に
「お母さんは?お母さんは?」
と言っているのが聞こえる。
こういう風に勢い込んでやってきたときはあえて、ゆっくり陽気な声で返事をすることにしている。
「はぁい、なぁに」
「おばあちゃん、いよいよダメよ」
一人で祖母のところに見舞いにいったのだ。車椅子になってからガクッと一段進んだように思う。
それでも冗談は通じるし持って言ったスイカも食べるのだが、声は小さくなり、なにか支えなしでは一人でベッドに座っていられなくなった。
「また食べなくなっちゃったんだって」
私に、これからは一人で祖母のところに行ってはダメだと言う。
なにかを覚悟した決意表明みたいに言う。
「わかったよ。お母さんが行くときはついて行くから声かけてね」
これまでは私は気が向くと一人でもフラリと顔を見に行っていた。そうなると、母が行く際、私を誘うのは負けたことのように思うらしく、「あなた、この前いったばかりだから、ついてこなくてもいいわよ」と憎まれ口をきく。「でもまた会いたくなったから」とわたしはオマケで付いていく。
これがパターンだった。
母はもう、一人で祖母のところに行くのが怖いのだ。
「もうね。この歳まで生きたんだから、いつ死んだっていいのよ。この夏はもたないかもね」
不安と悲しさを蹴散らすように怒った口調で早口でまくしたてる。
「そんな、大丈夫だよ。いきなりすぐなんてことないよ」
「いや、もう、ダメよ。そう長くないわ、あの調子じゃ」
いいの、慰めないで、そんな硬い表情は、柔らかい言葉を受け付けない。
「まあ、じゃぁ、覚悟しつつ、頻繁に会いに行こう」
「あなたも、しっかりしてもらわないと」
わかったわかった。
だいじょうぶだから。そばにいるから。