多くを課さないこと
今朝、目が覚めて「あぁ、無事終わったんだ」と確かめる。入院する必要もなく、無罪放免で帰ってこられたのだった。この感覚。ゼロ地点に戻った清々しさ。
これは、そうだ。息子を産んだ翌朝の感覚だ。
「あぁ。済んだんだっけ。産んだんだっけ。」
もう、無事何事もなく出産ができるのかと、常に気にかけながらのあの日々から解放される。心配事は消えた。これからまた新しく始まる。
あの晴れ晴れとした感覚。
昨日の朝と何も変わらない部屋。地続きの日常なのに、何かが違う。いつものように起きがり、シャッターを開け、冷蔵庫を開ける。
心の開放感。どこまでも広がっていく。私の未来。
テレビをつけると、美空ひばりさんの特集をしていた。母親が死に、弟が死に、天涯孤独となったひばりさん。そうアナウンスが流れるのを聞きながら、朝食をとる。
息子も私と夫が死ぬといずれ、天涯孤独の身になるのか。俺、結婚できないよと、彼女ができないものだから今から言っている。
結婚したとしてもしないとしても。肉親がいなくなる不安定さは、できるだけ彼が年老いてからにしてやりたい。
長生きしよう。
もう、意味があるか、人に誇れるか、高尚か、なんてどうでもいい。
できるだけ、この世に存在しよう。
できるだけ、いい状態で。
役にたつかどうかよりも、機嫌のいい人でありたい。
ただ、機嫌よく生きていきたい。