お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

風通しよく

朝、目が覚めてリビングに降りていくと、この前三日連続でお茶に誘われ、自分がしんどいからと断り続けた彼女から、ラインが入っていた。

あれから、私の方から連絡を入れてお茶を飲んだ。彼女は全くわだかまりもなくいつも通りだった。

「私が断るときは、嫌いだからじゃないからね。単に自分の調子が良くないだけだから。寝込んでないけど、一人でぼんやりしていたいなぁっていうときがあるのよ。しんどくて。連続で断ってもそうだから。」

彼女は「わかってる。懲りずに何度も誘う」と言った。

誕生日の朝もラインで祝ってくれた。彼女に内緒で違う友達に会いにいくのがなんだか悪いような気がして、これから友人に会いに行くこと、ついでに合格発表に立ち会うことを文面に入れ、お礼を送信した。

合格発表の友人と彼女は私との会話を通してお互いの存在を知っている。2年前、私の家に友人が遊びにきたときにも、偶然彼女がいつものようにお茶を飲みにきたので一度きりだが、面識もある。

そのとき、彼女がその友人に向かって

「どうもいつもtonちゃんがお世話になっています」

と言った。

「まったくさ、それはこっちの台詞なのに、こっちはもっと付き合いが古いんだから」

友人は憤慨していたが、二人で私を「お世話になっています」と言うことに私は引っかかる。まぁ、お世話になっているのだが。

その彼女からの早朝ラインに私は一種身構える。

なんだ、今からお茶か。時々、午前8時半くらいにふらっと庭から入ってくる。たいてい私は食事中で、彼女は「いいよ、続けて」と、それを見ながら一緒にお茶を飲む。それは別に構わないのだが、まだパジャマだし、シャッターも開けてない。

【今朝、雨すごかったね。御宅の庭を掃除するのにうってつけの日だなと思って】

ドイツの有名なメーカーの、ジェット水流で庭の苔やホコリをあっという間に綺麗にしてしまう用具があるらしい。うちにくるたびに「今度綺麗にしてあげる」と言われていた。

「いいよ。申し訳なさすぎてこっちが落ち着かないよ」

「私がやりたいからやるんだからtonちゃんは見てればいいよ」

そう言われてもめんどくさくて、いつものらりくらりと断ってきた。

それを今日、これからやるというのか。

思わずそっとラインのアプリを閉じる。

どうしよう。いやだ。今日はやだ。

既読はまだついていない。とりあえず朝食をとってから返事しようか。

うろうろ部屋の中を歩き回る。

何も手につかない。

半分現実逃避で着替えてそのまま散歩に出た。

雨がりの空気を吸う。外に出ると、気分が解けるのがわかる。

湿った土の匂い。

なんて返信しようかと考えているうちに、そうだと、彼女に電話をした。

「もしもし。あ、私です。今朝ほどはありがとう。お申し出いただいた件ですが」

「そうそう。庭の」

「あのぉ、謹んで、お断り申し上げまする」

「そお?いいかなと思ったんだけどね」

「まだ母もシャッター降りて寝てるし、私もなんだかそんな気分じゃないよ」

そんな気分じゃない、と言ってみた。

「そう?オッケー。いいよ、また今度にしよう」

ホッとした。成功。これでよかったんだ。うん、ありがとね。と言って電話を切った。

察してほしいというのは傲慢だ。これからはかラインじゃ伝わらないニュアンスは迷わず生の声で伝えよう。

できるだけ本心を交わし合う関係で続いていきたい人なのだ。

息苦しくしているのは私なんだ。

気楽に伝えていこう。