お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

おばあちゃんになっても

ママ友という関係なのかもしれないが、お互いそう、思っていないと思う。子供達は学年も違う。小学生の夏休み、ある日、彼女が突然メールをよこした。

「暑い。子連れて外出する気力もないわ。だれきっているので、うちにきませんか」

びっくりした。道で一度か二度、会釈をした程度なのに、なぜ、私を。

それがきっかけで、ここまで続いている。

私が倒れた時はうちの台所に立ってくれた。入院した時はハーブティをポットに入れてお見舞いにきてくれた。退院してからは夫に「もうちょっと大事にしてください」と意見した。よく世話を焼いてくれる人なのだ。

恩人でもあり、親友になりつつあるママ友でもあり、エコバックを持ってないと叱ってくる、ちょっと口うるさい私の風紀委員でもある。

先週、ラインでお茶に誘われた。いつもならホイホイいくのだが、疲れていて出たくなかった。

「ごめん、疲れて午後、寝ようと思ってる」

「了解。また今度」

その翌日、また誘われた。

「お加減いかかが?お茶、どうぞ」

昨日よりだいぶ楽になったが、眩暈も眠気もして横になっていたい。迷ったが断る。

その翌日、「これから買い物行くけど一緒にいかない?」。

今すぐ出られる状態ではなかった。夕方、のんびり行こうと思って寝ていた。

「すまん〜。今日はもうちょっとゆっくりしてから行く」

以前もこんなことがあった。そのときも、体調が悪く、家の中で這いつくばっていた。誘われるたびに断っていたら

「もしかして、私、嫌われてるのかな」

と返ってきた。慌ててすぐ電話をした。

「嫌ってるならこれまでお茶にいかないよ。言葉通り受け取って。嘘はつかないから」

わかった、ありがとうと返事が来てそのときはお互い安心した。

昨日、家のインターフォンが鳴った。彼女だった。

「今から買い物行くけど、いかが?」

どうしてこうタイミングが合わないんだろう。

「ごめん。生協さんと、東京ガスの人がこれからくるんだ」

「了解」

そして、今日。

「お昼寝してなかったらお茶でもどう?」

ううむ。ここは無理してでも行こうか。これからブックオフに買取金額を受け取りに行く約束をしてある。母に頼まれた買い物がある。そして何より、夫と息子が外出中、休憩したい。体力がないのですぐ疲れる自分が後ろめたい。

どうする。頑張ればなんとかこなせる。でもきっと、くつろがず、間に合わせのように会話をして、頃合いを見て帰るということになるだろう。

それって。それってどうなの。

これからも付き合っていくならこれからもこういう場面は避けられない。その度に取り繕わなくちゃならない間柄はしんどい。楽な関係で長く付き合いたい。余計な嘘のいらないような。

「申し訳ないっ。旦那が帰って来てるの。今、出かけてるけど。買い物二つと夕飯のしたくして、少し、休憩したいっ。本当にごめんっ!!!」

ええい。これで気まずくなるなら、致し方ない。

私はそういう奴なんだ。体力ないからちょくちょく横になりたいんだよぉ。

ドキドキしながら返信を待つ。

「あら、やぁね。仕方ない。また今度」

「ごめんっ」

しばらく途絶えた。

スーパーのレジ中、着信音が鳴った。彼女だ。

「気にすんな」

よしっ。よかった。本音でぶつかって、繋がった。

またひとつ、彼女と距離が縮まった。

 

 

どうする。