お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

瞬間に立ち会う

友人と会ってきた。私の誕生日を祝ってくれるという。

高校一年からの付き合いで、もう34年。私の親友と呼べる3人のうちの大事な一人なのだ。

ところがその彼女、今日、浪人生の娘さんの国立大学の合格発表だという。

よりによって。それなら今日でなくてもいいのに、私の方は。

「だって会いたかったんだもん。不安で」

ということで娘さんからの合否の連絡を二人で待つことになった。

1時に発表で待ち合わせたのが11時半。

彼女は緊張からか会うなり近況報告を一気に話してくるが、聞いてるこっちは気が気じゃない。

「そろそろじゃないの」

「まだ、着信してないよ」

オフィス街のレストランの昼時なので、あちこちで携帯電話が鳴る。その度に私はビクッとし、彼女に

「鳴ってる!」

と言う。

「違う、この音、私のじゃない」

1時半過ぎ、合格の知らせが入った。

「どうだった?受かった?・・・そう。・・うん、うん。いいよ。ゆっくりしておいで。おめでとう。よかったね。・・あ、お父さんにも電話して声聞かせてあげなさい。きっと仕事も手につかないでいるから」

彼女の目がみるみる涙ぐんだ。母の顔だった。

あんなに会うと旦那さんの悪口を「うちはのさぁ」と言っていても、口ばっかり。思わず私の前で「お父さんに電話してあげて」と言ったその表情に夫婦を感じる。

妻で母の彼女の幸福の瞬間を見た。

受かっていたら明日、下宿先のアパートを決めに大学のある街に行く予定の彼女に「すぐ旅行会社に行って新幹線の席を取ったほうがいい」と席を立った。

胃が縮むような誕生日だった。

けれど最高のプレゼントだった。