お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

ダメなふたり

だらしなく寝間着のまま朝食を食べていたら息子が起きてきた。今日までが冬休みである。

息子も顔を洗い歯を磨き、寝間着のまま食べる。

わたしは朝食後、恒例のホットカーペットにゴロンとしながらテレビを観る。

息子はしばらくiPhoneをいじっていたが、やがて「俺、二階にいる」と言って席を立った。

「そこに洗濯したのが畳んでおいてあるから、着替えておいき」

「うーん・・・あとで」

今、着替えちゃえよと、言いたいがなにしろ自分がまだ寝間着で、しかもゴロゴロ横になってテレビを観ているのだ。説得力がない。

黙って見送る。

やがて私はテレビを消し、立ち上がる。しんどいけれど、このままだと一日中床に張り付いていそうだ。

今夜のおでんの大根とこんにゃくを仕込む。皿を洗い、洗濯物を干す。昨夜、入らないで寝たので風呂を沸かし直し、湯船の中で髪と身体を洗い、ついでに風呂を掃除する。暮れに行き届かなかった小さなカビらしきシミをみつけたので、壁じゅう磨いた。

服に着替え髪を乾かし、クリームを全身に塗り、洗面所も掃除する。

さっきまで着ていた寝間着とタオル、台所用の手拭いなど、二度目の洗濯機をしかけた。

さぁ。ここでやっと1日がはじまった。風呂に浸かり血流が良くなったからか、エンジンがやっとかかってきた。

バナナケーキを焼く。砂糖がなかったのでメイプルシロップを入れ、アーモンドとシナモンと少しのラム酒をいれた。結局、空で作れるのはこれ。もういい。馬鹿の一つ覚えでも、なにかひとつ、これだけは失敗しないというものを、これにしよう。

案の定、誰の注文でもなく作ったケーキはうまくできた。

宅急便が来た。着替えておいてよかった。

ラジオもテレビも、音に疲れて、いつものように楽しめない。

そんなに好きでもないけれどクラシックを流すことにした。名前はわからないけれど小学校のときの下校の音楽が流れた。刺激の少ない上質な音が、ゆったり部屋に広がる。

それにつられて、フワァっと正月モードで舞い上がったままのテンションがゆっくりゆっくりと、下がっていく。地に足が着いて行く。

詳しくないけれど、やはり長い歴史の中で良いものとして残ってきた本物には力があるんだなあ。

夕方、雨の中、買い物に出た。これでなんとなく、ちゃんと主婦をした気になれた。

帰宅しておでんの残りのネタを入れ、作り置きの煮豚やカボチャを付け合わせた。

朝、お風呂に入ったし、もう寝間着に着替えちゃおう。

息子は二階に朝上がったきり降りて来ていない。昼も抜いている。

時刻は6時。シャッターを下ろし、寝間着に着替え、夕食をセットした。

あ。と思う。

ここで「ご飯だよ」と呼べば息子は朝の寝間着姿で降りてくる。

まったく結局一日中その格好。と言ってやりたいが、当の私もまた寝間着だ。

なんの説得力もない。

言っときますけど、お母さんは一度着替えて、お風呂の掃除も洗濯もしたんだからね。買い物だっていったんだから。

と、言いたいがなんの説得力も、無い。

冬休み最終日。怠惰な二人。