お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

復職リハビリ

恥ずかしながらアイロンがけの練習をした。

家事の中でなにが苦手ってアイロンがけが一番いただけない。

シワシワの布がスーッと美しくパリッとなっていくのは心地よく、作業自体は好きな方だと思う。が、それもハンカチやランチョンマットのように真っ平らなもの、立体だとしても給食着やエプロンみたいに極々単純な素材で単純な作りのものまで。

ワイシャツやズボンのような袖だの襟ぐりだのセンタープレスだのと複雑なものがくっついたらもう、お手上げだ。ワイシャツ一枚、5分も10分もかけた挙句、仕上がりはどこかよれたシワが残る。

夫が赴任中、息子のシャツにアイロンなどかけるはずもなく、二年間きっちりアイロンは風呂場の横にしまわれたままだった。たった一度取り出したといえば、祖母の葬儀のとき、箪笥ジワのついたスーツにさささささっと雑にスチームを吹きかけたくらいであった。

単身赴任が終わるということはサラリーマンが帰ってくるということ。

サラリーマンは毎日ワイシャツを着て家を出て行く。

一枚着ては洗濯機にほうりこみ、また翌日も洗い上がりのシャツに袖を通して出社する。

おのずと、私のアイロンも復職必至ということになる。

実のところ、単身赴任する直前は、態度悪く形状記憶のものを買い込み、それをグルグル使い回していた。

脱水を短めにしてハンガーに吊るし、水分でやや重たいのを利用してパンパンと下方向に引っ張る。袖下も引っ張る。あとは近代技術にお任せし外に干しておけば、乾く頃にはほぼシワのない状態になっているという、便利でありがたいシャツにすっかり依存していた。

しかし。ふと思ったのだ。

私は50、夫は52。彼のサラリーマン人生もゴールが近い。

あとわずか何年かで定年となり、一線を引く。

残り少ない背広時代、このままずっと気合の抜けた専業主婦でよいのか。

私は外で働いていない。生きるの死ぬのの心配をかけたときも彼は文句ひとつ言わずに毎日毎日出社して家族を支えてくれた。やっとひとりの生活から戻ってきてまた形状記憶とは如何なものか。

もう一度、初心に戻って妻という仕事に取り組んでみようではないか。

 

そんな訳で今日の午前中いっぱい、アイロンがけをしていた。

手始めに息子のタンガリーのシャツ。

前をかければさっきやった袖にシワがつく。後ろをかければ、前がよれる。

よしここは初級のテーブルクロスから。

しかし、楽勝と思っていたクロスですら、あっちを伸ばせばこっちがヨレる。こっちを伸ばせば、あっちが歪む。一枚のクロスを仕上げるのに何度も何度も向きを変え、20分近くかかってしまった。

結局張り切った割にはガーゼ綿のストール一枚、テーブルクロス3枚、ワイシャツ1枚で力尽きた。

だ、だめだ。ここまでにしよう。これ以上やったらアイロン自体嫌いになりそうだ。

もうじき4月。息子も夫も1日から新年度が始まる。

私もなんとか、その波に乗って、二人をパリッとしたシャツで送り出すカッコイイ専業主婦になりたいのだ。