幸せの瞬間
息子は昨日の夜遅くまで履修をどうするか、研究していた。
あれほど学校がつまらないと暗い表情をしていたのに、受けたい授業ばかりで、「いまの俺の生きがいはここしかない」と言っていたバイトを1日減らし、土曜も授業を入れるそうだ。
先日、新しい学科のガイダンスにおっかなびっくり初登校した。
孤立を覚悟した予想に反し、仲間達は拍手で迎え入れてくれたらしい。早速クラスLINEにも登録させてもらったと照れ臭そうに言う。
友達なんかいらない。LINEは個人情報が流出するから知りもしない連中とつるむのはいやだ。テストや出欠の情報交換なんかしなくていい。
あの頑なで閉じこもった一年間を思うと、LINEに登録なんて、とんでもない変わりようだ。
とにかく、嬉しい。
嬉しい。あぁ、これだけで充分だ。
毎日が充実しているとか、やりたいことが見つからないとか。
私自身の毎日がどうだこうだというようなこと。そんなことよりもっと大事なこと。
弾んだ声で出かけていく息子を見送る今朝、これだ、と思う。
いってらっしゃい。
笑顔で出ていく家族を見送るこの瞬間、私は平和で満ち足りている。