お気楽日和

誰かに手紙を書く気持ちで、事件性のない平凡な毎日を切り取ってみようと思います。

芝の匂い

朝、目が覚める。

「そうだ、今日はあのブラウスを着るんだった」

昨日買った白いブラウスを思うと特別の1日が始まるような気になる。

タンスから出すときになって一瞬、それでも迷う。なんか勿体無い。どこに出かける予定もないのに新品下ろすのもなぁ。どうせなら来週、検診があるからその日にしようか。窮屈だけどワイシャツにしようか。洋服ダンスのハンガーにかかっている白いワイシャツを取り出しかけて、戻した。違う。違う違う。ちょっと勿体無いと思うことをするんだ。

着た。嬉しい。

この感じ。懐かしい。小学生の時の新しい運動靴を買ってもらった次の日の朝。

新学期の新しいノート。小さなウキウキ。

自分をウキウキさせるのって勇気がいる。

 

午前中、芝刈りをした。冬の間、放ったらかしにしておいた庭には雑草がそよいでいる。朝食をすませたテーブルからぼんやり眺めていた。

まあ今日でなくてもいいけど、ここがスッキリしてたら素敵な朝なのに。我慢できないほどではない。でも素敵じゃない。

よし。本当は根っこから抜くといいのだろうが、手っ取り早くさっぱりさせたくて芝刈り機を使う。小一時間もしないうちにガーッと綺麗になった。そうなるとちょっといじりたくなってプランターを動かしてパンジーを玄関脇に並べた。

花に水をやり、芝に水を撒くと土の湿った匂いがした。

風が吹いて顔に当たる。髪が揺れる。袖が裾がハタハタっとする。

あぁ、今日はもうこれで満足。今日はこれで全てを成した。

 

何も今やらなくてもいいじゃないのと言われても。

くだらないと言われても。

私の暮らし。

こうだったらいいんだけどなぁ。は大事にしよう。

それはランチョンマットだったり、箸置きだったり。お菓子を食べる時のお皿だったり、趣味に合う洋服だったり、ちゃんと整えた芝生だったり。毎日使うタオル。そんな小さなこと。

そんなことを一つ一つちゃんと拾ってみよう。

生活に押されて投げないで。暮らしを大事にしよう。

 

扉が開いた。

新しい風が入ってくる。