コラッツ
そのまま家に戻り、洗濯機を仕掛けながら朝食の用意をしていた。
まったく。きたからには仕方がない。面倒みるか。パンジーにはなんの罪もない。歓迎されていない波動を感じて、申し訳なさそうにしている。
パンジーは悪くないのだ。可愛がろう。これから寒くなる。根付くまで気にしてあげないとなぁ。
ここでハッと思った。母は来週から姉とニューヨークに行くのだ。
留守中、いつも庭の水やりを頼まれる。あいつめ、出かける前にわざわざたくさん仕掛けやがって。やりおったなぁぁぁぁ。
そこにゴンゴンっと窓を叩く音がする。見ると困ったちゃん張本人がほっぺをテカテカ光らせて立っている。今日も朝から体操教室に行くのだ。
「ゴミ、ありがと」のジェスチャーを窓の外でする。OKサインをしたら、トコトコ出かけて行こうとした。反射的に私は「コラッ」と部屋の中から呼び止めた。
「何っ?」
ビクッと立ち止まって振り返った母にこう言った。
「ありがとじゃないっ。あれほ植えるんじゃないって言っただろう。なんじゃこりゃ。」
「あ・・めんどくさくなっちゃって、うちの方、これ以上入れるとカッコ良くないし」
「しかも、これだけあちこち植えておきながら、あなた、来週、旅行行くんじゃないのよ。出かける前に面倒な仕掛けたくさん作りやがって」
母はゲラゲラ笑いながら、
「ばれたか。いいじゃない、大丈夫よぉ、ただ、水をやるだけなんだからできるわよ」
違う、そう言う問題じゃない。
「私もね、やりながらちょっと多すぎちゃったのと、タイミング間違えたなって思ったんだけど、やり始めちゃったし。昨日、夕方、出かける前に片付けたかったのよ」
昨日の夕方、教会で賛美歌のコンサートが千円だったので友達と行くこになっていた。その前にやってしまいたかったらしい。
「午前中、庭仕事して、夕方コンサートでしょ。もう疲れちゃったわよ」
そういって、体操教室でオババは今日も体を鍛える。
花屋のおばさん、ほんっとすみません。