ムキになる
掃除機を買ったことが母にバレた。隠してたわけではないが、言わなかった。
「あ。やっぱり。急に借りに来なくなったから、おかしいなと思ったのよね。買ったの?いいなぁ。私も、そういうの、欲しいのよね。いくら?」
うっと詰まる。が、さもこともなげに値段を言った。
「あらっ。そんな高価なもの買ったの?だからうちのを使いなさいって言ったのに。まぁた、そんな無駄遣いしてっ。」
こ、この人は・・・。本当に人の楽しみに水や釘をさすのが得意だな。
急に今、手に持っている新品が薄汚れていく気がする。いかん、負けるものか。
「いいでしょ。これね。日本のダイソンって言われてるんだって。本当はもっと高いのがあったんだけど、最新の一つ前のバージョンにしたら安くなってたからさ。」
よし。そうだ。そうだ。これはいい買い物だったんだ。言い返したら、またまた自分のマシンがとても良い品に急上昇。
「へぇえ。旦那さんに申し訳ないわねぇ。こっちでこんな贅沢して」
く〜。そうきたかっ。
「ふふふ。旦那さんは私が嬉しそうにしているのが一番嬉しいんだって」
言われたことはない。勝手に、そういうことにする。
母はちょっと貸して、と私から掃除機を取り上げ、少し、かける。
「重〜いっ。こんなの使ってんの。重い!」
「これ、最軽量なんだって。外国のは重くて壁にまでかけられないけど、ほら」
私は店頭販売のデモンストレーションのように、掃除機を軽々と持ち上げ、壁や扉の上の埃を吸い取ってみせる。
「ヘェ〜。私はもう少し、いいの探すわぁ」
か、帰れっ!!
腕が・・・プルプルする。